「オードリーのオールナイトニッポンin東京ドーム」の日。昼前に起きて土曜深夜放送のANNをタイムフリーで聴いた。あまり気持ちが乗らずぼんやりとしていたのだが、SNSを見ているとドームには朝から物販で大量の人が並んでいるらしく、ライブビューイングが始まるまですることがないし、せっかくだからと東京ドームに行ってみることにした。もう8年近く毎週聞いてきたのだから。新宿駅で総武線を待っていると、ドームライブのロゴ入りの黒いTシャツを着た男性が前を横切った。自分もジャンパーの下に同じTシャツの白を着ている。ジッパーを上まで閉めて見えないようにしている。それから電車がドームに近づくにつれ視界にすこしずつグッズが増えていった。水道橋駅で共に降りる。
大学時代、水道橋にはしょっちゅうプロレスを見に行っていた。コロナ以降離れてしまったので4年ぶりになる。先に、よく観戦前に腹を満たしていたはなまるうどんに行く。以前はファミマの店内に地下に降りる階段があったのだが、改装されて入り口が別々になっていた。降りるとまたオードリーのグッズが目に入った。店内は8割がドームの客、残り2割は競馬新聞を片手に持ったWINSの客だった。普段頼まない塩豚ねぎうどん(中)を食べた。
ドームへ向かう。ドームシティに渡る橋は小綺麗になり、入口のアーチはなくなっていた。ドーム敷地内にはもうリスナーしかいない。ジッパーを下ろしてTシャツが見えるようにした。グッズの物販やビジョンの撮影ですごい人だが、そのわりにはがやがやしておらずやや静かめだったのがラジオリスナーらしくて可笑しかった。歩き回り写真を撮って満足し、水道橋のカフェはドームの客ばかりだろうからと飯田橋まで歩いた。駅すぐの珈琲館に入ると全然同じTシャツの人がいた。カフェインを摂らないようメロンソーダを頼み、日記を書いて、小鳥書房文学賞に応募する3日間の日記を選ぶ作業をした。17時前に新宿に移動して、バルト9でライブビューイングを見た。
ただ無料でラジオを聴き続けていただけなのに、その先にこんな光景が待っているとは思ってもみなかった。ほんとうにただ聴いていただけだから。この1年はドームライブのために「ただ聴く」ではいられないことがすこし苦しくなっていた部分もあった。それでもスクリーンに大写しにされたふたりの表情の変化をみているだけで、見届けられて良かったと思えた。最後の漫才を見て、帰り道に福尾匠さんの、武尊vs那須川天心の試合の日の日記のことを思い出していた。あの場にたったふたりで立つことの難しさ。この日記を書いている今、福尾さんの日記を読んで彼が別のライブビューイング会場に居たことを知った。
松屋でおろしポン酢牛丼を買って帰り、食べてシャワーを浴びた。眠れそうになかったので散歩に出た。風はあるが冷たくはない。近所の公園で若者二人がキャッチボールをしていた。あれと思って遠かったが目を凝らすと、どうやらふたりともドームで散々見かけたグッズのベースボールシャツを着ているようだった。ライブ後に深夜の公園でキャッチボールをさせてしまうなんて、あのふたりはなんと途方もないことをやってのけたのか。声をかけてみたかったが、ふたりにしておくことにした。