EDCRADIOきっかけでずっと行きたいと思っていた「千とせ」本店をようやく訪れることができた。なんばグランド花月の少し先の角を曲がるとまだ平日の11時なのに10組近く並んでいるのが見えてすぐにここだとわかる。前には関西弁を話す出張中らしいサラリーマン二人組、後ろには腰くらいの高さの巨大なスーツケースを引いたアジア人観光客に挟まれる。千葉雅也『センスの哲学』を読みながら時間を潰して、店に入ったのは1時間後だった。食券機で肉吸い800円と小玉(卵かけご飯小)200円を注文する。痩せた女将さんが一人で回す狭い店内は緊張感はないが静かで、皆が味に集中している。出汁をすすると、優しい深みがあり背筋が伸びる。youtubeのレシピで作ったものやセブンで売っていた肉吸いとは全然違った。肉とネギと汁、卵かけご飯、漬物を交互に口に入れていく。肉吸いの塩気と熱さはご飯で和らげられ同時に甘みが融合し、ときおりきゅうりの漬物が読点のように間を作ってくれ、いっぽうたくあんの柔らかい甘さはこの流れで食べるからか脳にガツンときてくらくらさせられる。このシンプルな要素からなる豊かさを味わうために皆自然と集中していたんだとわかった。出汁を飲み干して店を出た。観光気分で寄っただけだったなのに、ちょうど『センスの哲学』の内容も相まって何かが書き換えられてしまった気がした。
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過去日記(2023.10.1〜12.25)
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