わたしの感情的な唄

umi55
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20時がきらいだ

重ねた皿や湿度や短さ

かれらの間合いや足取りがきらいだ

書きかけの日記や

速記術の筆跡は好きだ

子守り唄が好きだ好きだ

雷光

半端な団らん

二週目のない回転木馬はきらいだ

芥子の乾性油が

グリザイユが

二点が透視が図法がきらいだ

長文メールとおんぶと澱粉

シリアルとシニカルとシーシャバー

訳書と役者と限度と原書

みんなきらいだ

月光と原稿と蓮華と解脱と月刊誌

尾の長い軒先の子猫とその家族みんな好きだ

丸襟ニットが好きだ好きだ好きだ

少年漫画の

敵組織が好きだ主人公の正義感はきらいだ

かれらの夢

あるいは野望

あるいは熱い仲間あるいは寒い科白

または偽善や詭弁がきらいだ

今にも歩き出しそうな動物剥製が好きだ

今にも走り出しそうな最終電車はきらいだ

沈黙の発車標

酩酊状態の老若男女がきらいだきらいだ

午前四時に南4局4本場

裸単騎でノーテン宣言する親番がきらいだ

辛子は好きだ裸足も好きだし花火はきらいだ

梨や柿は好きだ

海も。

(岩田宏「感情的な唄」に倣って)