2025/11/16

海辺
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公開:2025/11/16

次の演奏会に向けての練習が始まって、初回の練習は全曲軽く通した。パート譜を見たり音源を流して聴くだけではあまり聞き取れない各楽器の動きを把握して、曲の雰囲気だいたいこんな感じね、というのを知る回。年数だけでいえば25年は楽器に触っているはずなのに、わたしは楽譜を読むのがすごく苦手なんだなあって思って、年数だけで上手い下手できるできないは決まらないというごく当たり前ことを実感する。頭を使ってないんですね、多分。毎回最初の練習ではリズムや休符が数えられないシーンが多すぎて、初見でだいたいできる人っていったいどういう頭の仕組みをしてるんだろう……?ってコンマスを見ながら考えた。わたしは初見ではいつもボロボロだけど、ここからは曲の把握が速いし、まわりを見て調整するのは結構得意なので、オーケストラやアンサンブルの一メンバーとしてそれなりに役に立つ、というか、馴染めているとは思う。

練習が終わってから、オケの友人たちとごはんに行った。コンマス(結構年齢が離れているけど友人と呼んでいいのかな?)と、最近同い年ということが発覚したザ・都会の女!って感じの子、二人ともヴァイオリンがめちゃくちゃお上手だし、すっごく面白くて職場にはいないタイプ。コンマスがスマブラVIP帯のゲーマーなので、Switch2手に入りましたか?って聞いてみたら、最初の抽選で当たったしそのあとなんか普通に買えたから2台持ってるけど、1台定価で譲ろうかと言われ、わたしは突然Switch2を入手できることになった。急展開ですね。その日わたしが午後にレゼ篇のチケットを取っていたのをきっかけに、チェンソーマンの話、好きな漫画の話になったのだけど、コンマスがデンジくんが好きな女性全員に命を狙われていたところに共感できると言っていて、社会的に地位が高い仕事をしている人なのでお金目当てにされることが多いらしい、そんな部分に共感することってあるんだ……と思った。世の中にはいろんな人がいて、本当におもしろい。女の子の方は『日出処の天子』と『北斗の拳』が好きと言っていて、ほんとうに同い年か?意外で渋くて最高だった。

大人になったら友達できないから学生時代の友達は大事にしたほうがいいよ、なんて言われていたし、そういう悩みみたいなのもよく聞くし、自分もなんとなく風潮としてそうなのかなって思っていたんだけど、全然そんなことなかったな。今までの人生で学校に馴染めたことがなくて、学校生活で困らない程度に友達はいたけど、やっぱりちょっと環境には自分の異物感を感じていたし、友人と卒業後もずっと続くかって言ったらまた難しくて、だからこれからどんどん孤独になっていくんじゃないかってどこかで思っていたけれど、大人になっても友達できたよ、しかも学生時代よりもっと苦労せずに。「大人になったら」で言われる大人というのは、もしかしたら仕事とか家庭とかで、生活以外に自分のリソースを割けなくなった、そもそも、むしろそういうことをしなくても全然ちゃんと生きていける人たちのことなのかもしれないと思う。わたしは仕事を頑張りたい人間ではあるけれど、これからもオケに参加するし映画も観に行く、わがまま、でもそうしないと生きていけないことが分かっているから。そういう自己中心的な生き方が大人の姿として良いのかはわからないけれど、すくなくとも東京は地元にいるより「大人なんだから」「社会人なんだから」「いい年齢なのに」のプレッシャーが少ないし、そういう自分でいる限りこれからも多くの素敵な人と出会ったりできる気がする。

なんか、人生ってラインの見極めなのだなって思う、どれくらいの仕事量なら楽しく働けるのか、仕事と趣味と休息の配分はどれくらいがベストなのか、休日の予定は何件まで入れられるのか、飲み会のメンバーは何人までだったら終わった後ぐったりせずに済むのか、他人の言動をどこまでなら許せるか。色々な出来事を通してようやく自分のラインがわかってきて、好きなこと嫌いなこと、やりたいことやりたくないことの振り分けも出来るようになってきて、今が一番生きていて楽しいな。

いまマッツ・ミケルセン生誕60周年記念祭として、テアトル系列の映画館でマッツ出演作をいろいろ上映している期間で、本当は全部観に行きたいけど、時間帯のこともあり今日は1作だけ。ヒュートラ渋谷はいまマッツの写真を館内のいたるところに貼っていて、館内をうろうろするだけでおもしろい。映画自体はなんかツッコミどころが多い感じの普通の映画だったけど、なんだろう、やっぱり映画館で映画を観るという体験がわたしは好きなのだなと思った。あと外国映画で英語以外の響きが聞こえるとうれしい、今日のはデンマーク語だと思う、"Tak"(ありがとう)しかわからなかったけど、ちょっと口の中でくぐもるような曖昧な響きがなんとなく寒いところの言語っぽいなと感じた。