怒りを吐き出す

わたし
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怒っている。愕然としている。そして諦めている。

色んな負の感情が奥底で渦巻いているけれど、20代の頃よりはずっと理性的だ。

20代の頃は若さからか体力があるからか、怒りの発露があれば純粋に怒りをそのままに抱いて外に出すことができた。

それはそれでとても苦しいことなのだけれど、30代に突入してからか、或いは病気を発症してからか、怒りという感情をあまり抱くことがなくなっていた気がする。どちらかというと諦観、諦めという感情が最も近い。そして以前よりも忘れっぽくなった。今でも記憶力はいい方だけれど、脳のスイッチがプチンとどこか極限までいくと切れる感覚がする。

それは多分、うつ病になった人は理解できるだろうけれど、脳のリソースが足りていないというか、脳がうまく動いていないのだ。ゆっくり回って、止まる感覚。

双極性障害が脳の障害なのは、当事者になって初めて、「ああ、そうだよな、脳の病気だよな」と思う。脳が上手く動いている感覚がしないのだ。どこかでポンコツになっている。記憶力も、感情も、思考力も全てデバフがかかっている。一度怪我をしてしまったらそれはきっと治ることはなくて、私はきっと、永遠にこの病気と付き合っていくことになるのだろう。

冒頭の怒りの話に戻る。そんな漠然としたポンコツの脳のどこかに、怒りという感情が渦巻いている。その発症源はわかっている。先日のとある出来事がきっかけだ。

昨年冬、私は会社の人間からプライベートな空間でセクハラを受けた。その人物には入社当時からお世話になっていたこともあり、私も食事をすることに特段嫌悪感は抱いていなかったが、私が思った以上にその人物は要注意人物だったのだ。

自分がセクハラされたのか、最初はよくわからなかった。それでもずっと数日間、嫌悪感にも似たモヤモヤを抱えていて、同じ会社に属する友人に相談したら、友人ははっきりと「それはセクハラだよ」と私の代わりに怒ってくれた。ああそうか、これはセクハラだったのか、とようやく私は理解することができた。

私が会社に対し何もアクションを起こさないことを察していたのか、彼女はそのあと、会社にセクハラ被害を通報したと私に報告をしてきた。私が大変な時にこんなことをしてしまって申し訳ない、とも付け足して。私としては、数年前に彼女も今回の加害者からセクハラ被害を受けていたことを知っていたので、彼女の古傷を抉ってしまったのではないか、彼女も苦しいのではないかと思い彼女に対して感謝と謝罪をした。

今となって、彼女の勇気ある行動には感謝しかない。私は加害者のセクハラ行動に対して怒ってよかったし、異を唱えてよかったのだ。

どうせもうこの会社に戻ることはないし、と流そうとしていた私一人が抱えていたら、きっとこの問題が表立つことはなかった。彼女は、私のためでもあり、これから会社で働いていく人たちがもう被害に遭わないためにと声をあげてくれた。私としては、ちゃんと怒っていいんだ、という気持ちになって、ありがたかった。

けれど、ありがたい!だけで終わるほどセクハラ被害というのは簡単ではない。

正直、嫌悪感はずっと残る。そして会社が下した処分を見てしまうと、たとえ自分に非が全くなかったとしても、私以外の誰かの人生を悪い方向に動かしてしまった(本当に私は悪くないのに)という罪悪感にも似た感情が生まれて、眠れなくなる。実際眠れなくなってしまったのは確かだ。

けれど、ここからだ。私が怒りを抱いたのは。

人事部から今回のセクハラ処分についてのフィードバックがあった。人事部は処分内容とその理由、加害者側の主張について説明してくれたのだが、その説明の中に「飲みに誘ったのも事実、店を二軒はしごしたのも事実、肩を触ったのも事実だと言って、加害者側も反省している」という言葉があった。

はあ?となった。私は加害者に抱きつかれたから友人に相談したし、友人も私が抱きつかれたことに怒り、セクハラ被害を訴えたのだ。にもかかわらず、加害者側は抱きついたという事実は決して認めず、「肩を叩いた」と主張しているという。私がその齟齬について人事部に質問をすると、人事部は加害者側と被害者側の主張に食い違いがあると返してきた。納得がいかなかった。

肩を叩いた?あれが?あの行動が肩を叩いたなんて、どの国でも通用しない。明らかに両腕を広げて、横を歩いていたのにいきなり抱きついてきたではないか。それに対して私は気持ちが悪いと思って咄嗟に両腕でブロックをしたのだ。

人って、こんなに狡く生きるものなんだ。自己保身するものなんだ。被害者側は受けた嫌な記憶や感覚は消えないのに、加害者は自己保身して終わるんだ、と、どうしようもない無常を感じる。怒りや諦め、呆れ。どう言葉で表現すれば良いのかわからない。言葉で表すことは得意なはずなのに、適した言葉が見つからない。いろんな感情が混ざり混ざって、私を苦しめている。

しんどい、そう口にしたら泣いていた。どんな仕事がしたいかもわからない。いきたいと思っていたはずの業界は全て落ちた。他の会社も、まるで見えない力が働いているかのように邪魔された。嫌な人間関係。前職で受けたパワハラがとんでもないものだったから、今はまだマシな方なのかと麻痺していたけれど、現在の職場も大概だ。嫌な人が何人もいる。縁を切りたい。けれど進みたいと思う道が見つからない。自分に無理をさせて変なアクセルをかけたくない。けれど内観が進まない。お金はどんどん減っていく。三年後くらいには400万くらい用意しないといけないのに。しんどい。

@uminosokokara
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