似合わないと思っていたものたちと手を繋ぐ

わたし
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先日、ジバンシイのメイクイベントに行ってきた。

きっかけは数日前、ジバンシイで買い物をしていたらBAのお姉さんに勧められたからだ。私はジバンシイの香水「π」が好きで、時々使用している。あと、「イレジスティブル オーデパルファム」も店舗でサンプルを試した結果気に入って購入した。ローズなのにキツくない、上品な香りがとても素敵だと思った。

うきうきしながら買い物袋をBAさんから受け取った時、BAさんは「来週、ここの一階でメイクイベントがあるんですけど、良かったら予約されませんか?」と声をかけてくれた。メイクイベント。なんだか楽しそうな感じがする。

BAさんは続けて言った。

「プロのメイクアップアーティストが来て、メイクしてくれるんですよ!」

この言葉がきっかけとなった。プロの人に!メイク!してもらいたい!!!

今までずっと独学でメイクをしてきたから、正解が全くわからなかった。自分に合うメイクができているのかすらわからなかったから、是非是非と二つ返事で予約をしてもらった。どんな悩みがありますか?と聞かれたので、「自分の顔が最も映えるメイクを知りたいから教えて欲しい」と言った。

当日。ドキドキしながらイベントブースへ行ったら、何人かメイクしてもらっているお客さんと、プロのメイクの人がいる。

気さくなお姉さんが担当してくれることになった。「今のメイクもとっても素敵ですよ!」と褒めてくれた。嬉しい。自己肯定感が上がる。

「全体的に色を揃えているんですね。イエベ系がお好きですか?」

「いや、イエベ系しか似合わないというか、使い方がわからなくてイエベに逃げてます…ブルベは絶対に合わないと思ってて…」

これは本当だ。私は正直イエベもブルベもよくわかってない人間だが、青みのあるピンクは似合わないと思っている。青や紫がかったピンクのアイシャドウを勢いで買って後悔したこともあったし、そういう系のピンクのリップを買って使いきれなかったこともある。だからある種、諦めていた。

「え、そんなことないと思いますよ?」

お姉さんはちょっと驚いたように瞬きをした。

「メイクって、色合いが全部同じ系統の色を選んでいても統一感があって素敵なんですけど、あえてずらしてもバチっとハマるんです。だから、アイシャドウとチークとリップのバランスを考えれば、全然問題なくブルベ系のリップは使いこなせますよ!っていうか、似合うと思います!任せてください!!」

ウオ〜〜〜〜!これだけで来た甲斐があったと思った。

そうなんだ、色って全部同じものを使わなきゃいけなかったわけじゃないんだ!「任せます!!」と言って私は地蔵になった。「じゃメイク一旦オフしますね〜」とポンポンとメイクオフシートを塗られ、伊勢丹のど真ん中ですっぴんになる。

すっぴんを晒してチベスナ顔になっている私を意にも介さず、お姉さんはじ〜〜〜〜っと私の顔を見て、骨格や影などを観察していた。「メイクしがいのあるお顔ですね〜」とニコニコ笑ってくれたので、それはどういう意味ですか…?と聞いたら「いや〜〜お綺麗ってことですよぉ〜〜!言わせないでくださいよぉ〜〜!」と溌剌とした笑顔で返してくれた。おもろい。口がうまい。

お姉さんは「新春に似合うピンク系エレガントな映えメイクにしますね!!」と笑顔で色々とメイク用品を選んで、テキパキとメイクをしていってくれた。

私「眉の色ってどう決めたらいいですか?😕」

お姉さん「眉大事ですよね〜。例えば、眉を赤っぽくするとちょっと幼くなるんですよ。赤くしたい時は髪の毛の色も合わせるとよりガーリーになるのでおすすめです。エレガント系だったらアッシュというか、色を抑えたものがおすすめですね。自然に一本一本眉を描いていくように足していって、最後はパウダーでぼかすと今風の眉になりますよ!」

私「アイラインがうまく引けないんですけどどうしたらいいですかね🤨」

お姉さん「あ〜リキッドとかだと結構きついですよね。ペンシルの柔らかいタイプをおすすめします。瞼を指でくっと上げてキープして、隙間を埋めるように描いていくといいですよ。全部縁取るのもまあアリなんですけど、エレガント!上品!にしたいなら真ん中とか三分の一くらいから描いていってください。あと、最後は綿棒で絶対ぼかしてください」

私「素肌が綺麗に見えるメイクってどうやるんですか〜😭」

お姉さん「いかに下地段階で仕込むか!!これで全てが決まります。下地、カラーコントロール、コンシーラー、ここで全てが決まりますね。クマの暗い部分にオレンジを乗せて血色良くしたり、影になる部分をコンシーラーで消したり。それをあくまでさりげなく!本当にこのくらいでいいの?ってくらい控えめに仕込むのが大事なんです。そこからファンデーションを薄付きで塗ると、違いがめっちゃわかります。大事なのは土台と仕込みです」

貴重な機会だから気になることがあったら逐一質問をする私に、お姉さんは嫌な顔ひとつせずに答えてくれた。

で、そんなことを色々話していたらあっという間にメイク時間が終了して、見事なエレガントメイクが完成していた。かわいい〜〜〜!私ってピンクメイクしてよかったんだ!嬉しい。シンプルに嬉しい。

めっっちゃ嬉しかったからいくつか気に入ったメイク用品を購入した。

決済担当してくれたお兄さんがまた溌剌とした人で「あら美人さんじゃないですか〜〜!こんなに買ってくださってありがとうございます!ウフフ!ジバンシイの沼にハマっていただけたら嬉しいです〜!あの人に似てるって言われません!?ピアノがうまい人、あの、松下奈緒!言われない?ご迷惑だったらごめんなさいね〜〜!」とマシンガントークをする中でカード決済を済ませてくれて商品を渡してくれた。

嵐のような人だった。ジバンシイの採用は個性豊かな人って決まってるのか?好きだけど。メイクしてくれたお姉さんと決済してくれたお兄さんにお礼を言って、店を出た。

帰りにプチプラコスメが買えるお店に寄って、色々と新しいコスメを購入した。ジバンシイで買ったものを組み合わせれば、素敵なメイクが出来るな〜とワクワクした。

いくつになってもメイクは楽しい。自分を映えさせるってめちゃくちゃ大事だなと思うし、私に合うものを増やしてくれたお姉さんに本当に感謝した。

子供の頃から、似合わないものを排除されてきた。気に入った服を購入して着ていたら「あんたにそういう服は似合わない」と母親に一蹴されたことがよくあった。

メイクもそうだ。仕事の関係で動画出演をしたら、母から「あのリップの色は下品だからやめなさい」と注意された。確かに少し派手ではあったな、と反省したけれど、何もそこまで言わなくてもいいじゃないかと、少し悲しくなったのを覚えている。

母は私の見た目に不寛容だ。太っていれば容赦無く太っていることをネタにしてくるし、メイクが似合わなければ悉くダメ出しをするし、母の美意識に反する服を着ていると容赦無く糾弾される。かといって、私が人生で一番体が引き締まっていたときも褒められたことなどない。「あと5キロ痩せれば綺麗なのにね」と溜息をつかれたことだけ覚えている。

「みっともない」という言葉に殺されてきた私の好きなものたち。それは確かに時として私をより「まし」に見せるために必要な言葉であったとは思う。けれど、私が私を嫌いになっていく要素も十分に持ち合わせている言葉の投げかけだった。

全てを母のせいにするつもりはない。けれど、私が私を見るときに厳しくなるのは、母の目と言葉もその原因の一つだと思う。

ブルベのピンクは無理だと思っていた。自分が変に見えてしまう。似合わない。そう思っていたから二度と買わないと思っていた。それを選ぶことによってなれる自分を、いつの間にか殺していた。

でも、やっと時間をかけて、いろんな機会をもらえて、もうひとつ新しい自分の選択肢を手に入れられた気がした。それがとても嬉しかった。自分に合うもの、もっと見つけていきたい。

@uminosokokara
日常の備忘録。どこにも共有しないでください。静かな場所で静かに自分のためだけにこれを書いてます。