ステータス確認探偵

倉林
·
公開:2024/6/26

ゲーム。やった。

ステータスを確認しながら事件を捜査するステータス確認系推理アドベンチャーゲームです。

ステータス確認系推理アドベンチャー。なんて限定的なジャンルなんだ。

前提からメタくていい。よくある「ステータスやスキルを登場人物が認識している」やつって好きじゃないんだけど、いっそ開き直っていていい。

進行はだいたい「容疑者が一堂に会した現場で、探偵が謎を解く」という推理ゲーム。調査もちゃんとするが、ポーズだけは安楽椅子探偵もの。一つの事件を追って展開が二転三転する度合いは、逆転検事に近い。

難易度選択のスクショ

難易度選択もある。びびりなのでノーマルにした。ペナルティはないから、どうせならハードでもよかったかもしれない。でも、ミステリは好きだけど、読者への挑戦系が解けたためしはない。

バトルのスクショ

キャラクターの立ち絵+表情差分が豊かで、画面は豪華。エフェクトもあるし、エフェクトの有無が推理に関わることもある。

調査範囲を見回す操作は天球のアレ。技術力。unityって色々できるんだね。全体的に手が込んでいるが、「これ無駄じゃない?」みたいな気持ちが生まれない、まともな手の込みよう。後述のログも充実しているし、作り込んであることが分かる。

ログのスクショ

ログの履歴は無制限で、メッセージ中の重要な情報はオレンジ色になる。発言者を指定した会話検索もできる。すごくない!?

見取り図などの画像も情報欄に全て残る。情報の閲覧に不便が一つもない。素晴らしい。一方で見返せばいいってわけでもなく、適宜メモを取っていたほうが謎解きははかどる。いいバランスだ。本当に推理ゲームとして完璧だった。

進行は単なる会話・メッセージのみではなく、パズルや並べ替えなどの推理要素もある。一つのゲームの中にいろんな法則のゲーム性を作るのって大変だと思うんだけど、ふんだんに取り入れてあった。これ無料って本気か?

単発謎のスクショ

また、本筋に関係のないミニゲーム? クイズ? もある。正解したら本編のヒントチケットが一枚もらえますよ、のボーナス。

単品でもまあまあ難しいが、手がかりは全て出題中に書いてあり、作者の脳内当てみたいな理不尽がない。さ、最高~! クイズ好きな人は楽しいんじゃないだろうか。正直、こっちだけを本編として出されてもやりたい。

ちょっとネタバレがある

ゲームとしては面白かったが、創作物としてはあんまり合わなかった。「友達と喋りながらするギャグボドゲ」くらいの気持ちでやるのがよかったかもしれない。

  • ジョブチェンジなどの概念があり、電話・銃・消音機・汽車が存在するローファンタジー。世界観とゲーム性に相互作用があるものの、「世界」だと思えなかった。

    謎解きは面白いけど、独特の世界設定を前提とする謎解きや、テキストに出ない手がかりがあるのはちょっと不親切かな~。立ち絵の全身を見られることに気付かない人もいるんじゃない?

  • 警察が舐められている。探偵ものゲームの都合上は仕方ないけど、そんな汚職っぷりだとそもそも国が立ち行かなくない? 本編中の登場人物がわりと裕福(≠金持ち)で、自由な振る舞いをして見えるから余計に。

  • 登場人物の名前の国籍がばらばら。同じドラゴン族中に英名も和名もいるので、種族別でもない。

    でも「こう呼ばれるので、やがてそれが本名になった」の描写があるので、そういう世界観ということかもしれない。自由だね。

  • 進行に伴って登場人物たちの秘密が明かされていくが、どれもメッセージでシームレスに説明される。主人公も驚かないし特別な演出もない。ト書きを読んでいる気分だ。

  • 元も子もないんだけど、メタ要素が絡まない推理ものとして読みたかったかも。いや、ステータス確認がないとほとんど成り立たないんだけどね。真っ当なアリバイ調査をしている時間が一番楽しかった。

最も気になった点として、主人公を始めとするみんなの感情が、シリアスな状況にいまいち乗っていなかった。何せ、死体発見時の反応が「ありゃりゃ」「うげ」だ。見返したら、犯人を含め誰一人死人が出たことに驚いてない。逆に面白い。

殺人事件において「命の重みがあること」は、謎解きのモチベとして最重要だと考えているので、どうも真剣さが足りなく見えた。

「各々PCを準備して持ち寄ったら、ヒロイックなPC1がいなかった」みたいな雰囲気。まあ、表現か必要性の話かもしれない。作者が見せたいのは心情描写ではなかったという意味で。

総じて「ゲームのために世界観を作った」の印象が強いかも。

「とあるMMO中のいちイベントです」みたいな舞台のほうがまだ気乗りできたかもな~。と思っていたら、登場人物は本当にMMOのキャラクターという設定らしい(おまけ要素の伝聞)。草。それ本編で説明してくれ。

クリアまで行ったが、あんまりのめり込めず、プレイ中に雑念がちらつきまくった。謎解きが面白かっただけに惜しい。

作者はいつもマダミスとか作ってる人らしく、システムと謎解きの掛け合いは良質。賢い犯人はいい犯人だ。ロールプレイとしてののめり込みやカタルシスを求めると肩透かしになるが、推理ゲームとしてはいい体験だった。

@umumbrella
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