昨日、息子は登校時に家の前で転び、膝を擦りむいた。
それを理由に剣道を休もうとしたので、私が強めに「サボるな」と注意した。
渋々行った道場で、いつも注意される癖を徹底的に指導されて、フラストレーションがたまった(本人曰く、膝の怪我が気になって修正できなかった)(私は無関係だと思う)。
稽古の終わり際、先生に「まだまだあかんな」と言われたことにムッとして、溜まったフラストレーションが爆発し、竹刀を乱暴に投げるように置いた。
それを見た先生にこっぴどく叱られ(当たり前)、やり場のない感情が抑えきれなくなり、道場の片隅でわんわん泣いた。
礼を欠きまくる息子の態度を先生が許すはずもなく、でも周りには「突然キレて乱暴なことをして泣き出した」ようにしか見えない息子の感情の波が理解できるはずもなくーーかくいう私も、息子が泣き出して十分以上経つまでこの流れは理解できていなかったーーやっと泣きやんでも、感情の整理が付かず悶々とする息子は、動かざること山の如しだった。
そこに、息子に以前きびだんごをくれた中学生の男の子がきた。彼は水曜は塾があるため、塾終わりに稽古をしたりしなかったりというスタイルで、今日は稽古をしない日だった。この桃太郎が、ベソベソしている息子をちらりと見て、本人ではなく私に「どうしたんですか?」と声をかけてきた。
驚いた。
子供は、別の子供が泣いていたら、まず本人に声を掛けるのが普通だし、実際今日道場にいたほぼすべての子供が泣き喚く息子にいろんな言葉を投げかけては徒労に終わっていた。
私が息子からヒアリングしたことをかいつまんで話すと、「はあ〜…竹刀投げたのは絶対あかんけど、他のところはまあ…うん、わかりました」と言って何かを納得し、息子の横に行き、ただなにもせず座っていた。
そうするうちに、息子の気持ちが落ち着いてきたようで、二人で外に出て、夜風に当たりながら何やら話し込んでいた。数分後、桃太郎は私に「もう大丈夫ですよ」と言い、息子の手を引いて戻ってきた。「あとで先生に謝りに行くんで、その時だけ一緒についてきてあげてください」。
なに?お供を従えるプロ?
私はもう今日は先生に謝ることもできないと思っていた。息子はそれくらい頑固でアホで先のことを見通す力がなくて強情で意地っ張りで負けず嫌いだ。それを説得して帰ってきた。
も、桃太郎〜〜〜〜〜〜!!!!!!
その暖かさにこっそり涙が出た。この中学生がめちゃめちゃいい子なのは知っていたけど、ここまでとは…息子のアホさには本当に何度愛想が尽きても足りないくらいだが、先生にちゃんと謝れたので、今回はもう一旦水に流すことにする。
息子は桃太郎にしがみついて「はいはい」とあしらわれていたが、彼のような子がいるから、息子は剣道を嫌うことなくまた道場へ足を運ぶと思う。
強く優しい桃太郎の未来が明るくあることを、お供の猿の母は祈ります。ありがとう、桃太郎。