戦場のピアニストを観た。ナチス・ドイツによるユダヤ人迫害がテーマの映画を観るのはシンドラーのリスト以来だけれど、映画だとわかっていても、人が殺されるシーンにはどきっとする。事実に基づいている分、アクション映画よりも生々しいからかもしれない。気まぐれで選ばれた人が前に出されて殺されていくシーンは、シンドラーのリストにもあったような気がする。理由のない理不尽さと、観ている立場でもいつ誰が選ばれるかわからないことへの恐怖があった。
この映画の舞台となったワルシャワを訪れたことがある。ワルシャワ旧市街といえば、ひび割れひとつもすべて戦前の通りに復興したことでよく知られる世界遺産で、はじめてその街の姿を見た時も思わず見入ってしまった。戦禍を経た街だと思えないほど人に溢れているのに、少し裏に入るとえも言われぬ静けさがあった。広場には絵画を売る画家がいて、音楽を奏でる人がいる、芸術が身近な街だった。それだけにいっそう、映画の中で荒廃した様子が頭に残っている。
英語だとワルサウに近い音がするけれど、そういえばポーランド語でこの街をなんと呼ぶのか知らない。調べてみると、ヴァルシャヴァのようになるらしい。行く前に少しポーランド語をやっておけばよかったと今更ながら思う。同行者と気が合わず、一日目から別行動になった分、あの街では街の姿ばかりよく見ていた。
留学から帰って、家族へのお土産に渡したもののひとつが、ワルシャワの広場で買った1枚の絵だった。20ユーロくらいだったと思う。そんな値段で絵が買えることに驚いて、広場を抽象的なタッチで描いた絵を買ったのだった。緑がかった薄青が、あの時から私のワルシャワの空の色になっている。