万年書ける筆

undeva
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公開:2025/10/12

今手元で常用している万年筆は3本ある。モンブランのマイスターシュテュック、ラミーのサファリのブルーレッドクリップ、それからペリカンのM400スーベレーン。モンブランが一番重くて手も疲れるのに、一番よく使っているうちにこれじゃないと落ち着かない体になってしまった。

モンブランの万年筆は、大学に入学した時に父からもらった。下の名前だけが印字されていて、今から思うと結婚して姓が変わることを考えていたのかもしれない。明らかな高級品だったのでしばらくは持て余してしまっていたけれど、留学から帰って万年筆をよく使うようになってから、ずっと使い続けている。書類を書くときはもちろん、手紙を書くときも、半分以上はこれを使う。ミッドナイトブルーのインクはいつもデスクに置かれている。

ラミーは手軽さを求めて自分で買った。これでも5000円オーダーではあるのだけれど、他の万年筆だと万を超えるから、国内はともかく海外旅行にはとても持っていけない。ついでにデザイン関係の仕事をしている友人に推されたこともあって、試しにと思って買ってから、ずっと二番手の控えでいてくれている。シンプルで軽く、色があざやかなのもお気に入り。

ペリカンは、小さいころからずっと憧れのブランドだった。塾の国語の先生が愛用していて、テストのコメントは読めないくらいの下手な字なのに、万年筆を使うから格好よく見えた。いいな、という私に母は子ども向けの万年筆を買い与えてくれて、それも少しの間使っていたけれど、ペリカンのくちばしはその万年筆にはなかった。何度もサイトを見ては、スーベレーンに憧れていた。本当は初任給で買おうかとも思っていたのだけれど、モンブランがあるからずっと先延ばしになっていた。エーデルシュタインの新色が出るたび、そろそろスーベレーンを買おうか、でもな、とずっと迷っていた。

手元にやってきたのはつい先日のこと。義理の母が贈ってくれた。エーデルシュタインのタンザナイトを添えて。名前は旧姓のを入れようかと言われたのを、新しい名前のものにしてくださいとお願いした。私はまだ、新しい名前をつけたものを、ひとつも持っていなかった。

念願のスーベレーンは思っていたよりもずっと軽い。何だってできそうな気にさえなる。最近はパソコンやスマホで文章を残せるけれど、久しぶりにゆっくり文字を書く時間をとってもいいかもしれない、と振り返りながら改めて思う。