果物の秋

undeva
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公開:2025/10/9

実家にはいつも果物があふれている。つい先日帰省した時も、絶えずぶどうとりんごで歓迎されていた。そんな家だったものだから、たまにスーパーで果物の値段を見るとちょっとぎょっとしてしまう。我が家にとって果物は、もらうか、庭になるものだった。

庭にはモモやウメ、クリ、めずらしいところだとヤマモモの木も生えていた。食べすぎたせいか、子どもの頃から登りすぎたせいか(ヤマモモは特に手ごろな枝がたくさんあった)、大半が枯れて久しい。それでもクリの木は長い間健在でいて、秋ごろになると実をいくつもつけた。拾ってきたのを鍋でゆでて、小さなナイフで祖母が剥いてくれたのを食べるのが好きだった。

施設にいる祖母がふと懐かしくなって、スーパーで栗を買った。ネットで拾った知識に沿ってゆでて、ぴかぴかとした栗をざるにあける。それをひとつひとつ包丁でふたつに割って、アイス用のスプーンですくって食べた。それが去年の秋のこと。

結局、私ひとりでは消費しきれず、いくつかをだめにしてしまった。それが悲しかったので、今年はまだ栗を買っていない。でもやっぱり、どこからか届くぶどうよりも、祖母の皺だらけの手が一緒に思い出される栗の方が、ずっと秋の味がする気がする。