透明なラタトゥイユ

undeva
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公開:2026/2/16

ラタトゥイユといえば、私が実家で弁当作りを担当していた時の定番料理だった。途中から煮込みに入るので目が離せるし、上の妹からのウケが抜群によかったので、一番よく作った料理かもしれない。ひとつ難点を挙げるなら、あまりに上の妹がよく食べるので(おやつの代わりにもしていた)、鍋ひとつ分作っても1日でなくなってしまうことだった。しかたないなあと言いながら、次の日のお弁当のためにカボチャを塩で煮た記憶がおぼろげに残っている。

そんなラタトゥイユだが、野菜だけの料理をうちの人はあまり食べないので、結婚してからはあまり作らなくなった。ラタトゥイユが3日も冷蔵庫に残ることに慄いたのが懐かしい。最近は一周回って自分のためにラタトゥイユを煮ている。しばらく食べなくなってはじめて、トマトが好きだったのだと気がつく。

最近『Tasty!日刊ごちそう通信』という本を読んでいる。『ショートケーキは背骨から』とも少し似ているけれど、イラストや写真が満載のもう少しゆるいノリの本だ。ショートケーキの方は取り寄せやお店で食べる話がメインなのに対して、Tastyは自分や友達が作る話が多い。ちょうどこの間読んだ『とりあえずウミガメのスープを仕込もう。』ともそういう意味では似ている。レシピもいくつも載っているので、試しに塩ラタトゥイユというのを作ってみることにした。トマト缶を使わない、煮込まないラタトゥイユ。

はじめてのレシピはできるだけ忠実に作ることにしている。材料を揃えたところで使い損ねていたジャガイモを見つけてしまって、早々にレシピから少し外れはじめたけれど、ご愛嬌ということにした。玉ねぎとピーマンと、青くなりかけたジャガイモをオリーブオイルに絡めていると、透明だと思う。色はしっかり、あざやかすぎるくらいにあるのに。野菜そのものの色がよく出ているからそう思うのかもしれない。

いつもならトマト缶を入れて20分ほど煮込むところを、すぐに火を止めて予熱だけで仕上げる。普段作るラタトゥイユとは似ても似つかないのに、ラタトゥイユだ、と思うのが不思議だ。あの料理を気に入っていたのは妹だけでなく、私もだったのかもしれない。

野菜そのままの料理は、炊き立ての米とオリーブオイルで焼いたシンプルな鶏肉によく合った。生きているなと思うような料理だ。あっという間にラタトゥイユを食べ尽くしていた妹の気持ちが少しわかったような気がした。

@undeva
本と旅と万年筆が好き。