涼しい、が好きだ。特に、風呂上り。あたたまった体が、内側はあたたかいまま、皮膚で空気のつめたさを受けとめるのが好き。ぽかぽか火照った体の時、ドライヤーが終わった時なんかは、外に出て夜風にあたりたくなってしまうくらい。今日は雨が降っていたから、空気がよく冷えていて、なんとなく水気を帯びている。テーマパークとかにある、ミストみたいな。わたしにとって、あのミストはディズニーランドのものだ。修学旅行で初めて行ったディズニーランドの、気の利いていて素敵な設備が忘れられない。軽やかで決して重たくない水気。湿気とは違う。まとわりつかず、さらっとしている。雨の後特有の空気だと思う。夕方から友人たちと焼肉を食べに出かけていて、部屋の暖房をつけていなかったから、帰ってからずっと、この部屋は心地よい涼しさに満ちている。
わたしは涼しさに、なつかしさみたいなものを感じている。どうしてかはわからない。むきだしの足、つま先からふくらはぎの手前くらい、パジャマが覆わない部分の冷え。生地の隙間から入った空気で、肩や背中もすーすーする。なんとなく、お泊りを思い出す。お泊り。祖父母や親戚の家に、幼い頃は週一くらいで泊まっていた気がする。これは言いすぎかもしれないけれど、そう思うくらい頻繁に泊まっていたのだ。泊まった先で出される、布団の匂いとか、人に普段使われない布の、ちょっとよそよそしくて不愛想なかたさ、つめたさ。そういうものを思い出すのかもしれない。これは今書いていて気が付いた。そんな感覚が、確かにあったなあ、と。
今度、何年かぶりに祖父母の家に泊まりに行く。親戚の家にも伺いをたてるつもり。ほんとうに久しぶりだし、母と祖父母が半絶縁状態(父方の祖父母。母は父が嫌いなので、その両親や親族も嫌う。それだけの理由ではないけれど)で、あまり会う機会もなくなっているので、それなりに緊張する。でも多分大丈夫。とも思う。あの人たちにとって、わたしはいつまでも孫のままだし、それはわたしにとってもおなじことなので。