2026/06/29 たのしいプロパガンダ

たーんえー
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公開:2026/6/30

『たのしいプロパガンダ』という本を読んだ。プロパガンダというと、どうにも押しつけがましかったり単調で退屈なものを想像する人も多いのではないか。本書では実際にそういったものが大半であることは認めつつ、過去のプロパガンダが如何に「楽しさ」を通じて民衆をコントロールしようとしてきたかを紹介していく。キャッチコピーは「本当に恐ろしい大衆扇動は、娯楽(エンタメ)の顔をしてやってくる!」だ。

本書では、戦前の大日本帝国の事例に始まり、欧米、東アジア、宗教組織、最後には現代日本の事例が紹介されていく。だが現代日本と言ってもこの本は10年前に書かれたため例としては少し古めかつ「プロパガンダ」とまではいかない事例もあり、内容としては他の章と比べると説得力に欠ける感じだった。一方、序盤~中盤の歴史上の事例を紹介している章は、非常に面白く読むことができた。

特に最初の章の、大日本帝国の事例が興味深い。戦前の「思想戦講習会」(この呼び名からして良い)の中で、陸軍中佐が「宣伝は楽しくなければならない」といったことを語っていたそうだ。実際、2時間の喜劇の中に5分だけ日中戦争の解説を入れるなど、一方的に押し付けるのではなく面白さの中にほんの少し意図的な誘導をしようと試みていたらしい。正直自分の中の軍部のイメージとは少しギャップがあったが、こうした考えは軍部全体というよりは、(あまり中心部にはいない)一部の先進性を持った軍人によるものだったようだ。

またこうしたプロパガンダは軍部の押しつけのみで作られるのではなく、むしろ民間企業側が率先して行うケースもあったという。政府による発禁処分などがあったのでそれによる損失を避けるために忖度して動いたというのもあるし、当時は大日本帝国の強さを煽ることが売上にも繋がりやすい時代だったという。民間企業としては当然の利益追求を行ったことで、国家を経由せずとも自然とプロパガンダ的なものが作られていったというわけだ。そして(基本的にエンタメの素人である)政府や軍部を挟むより、エンタメ企業が自己判断で作ったプロパガンダの方が、きっとクオリティは高かったのだろう。

企業、あるいはクリエイター個人としては、やはり売上を上げなければ生活が立ち行かなくなる。外部から「こういった方向性以外は売上に繋がらない」という状況が整えられるだけで特定の方向性を持った娯楽が量産され得るというのは、残念ながら現代日本でもそう変わらないだろう。景気が悪くなるほど、その傾向は強くなりそうな気もする。

実際、昨今問題になっているインターネット上の煽情的な選挙動画でも、政治的意図よりも収入を目的とした作り手もいることが知られている。こういった動画は(自分はあまり目に入れないので想像だが)例えば「特定の政党が痛快にやっつけられる」といった類のもので、退屈とは真逆な「刺激的でたのしいプロパガンダ」として機能していると推測できる。

書籍の内容としては面白かったものの、色々考えていると少し気が重くなってしまった。ひとまず、こういった歴史を知っておくことは最低限重要とは思う。その上で個人としてどうしていくべきかは難しいが……