2026/06/09 さくらのまち

たーんえー
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公開:2026/6/9

最近シンプルに体調が悪く、コンテンツ摂取のペースが落ちている……

さくらのまち

『さくらのまち』を読んだ。著者・三秋縋氏の作品で自分が他に読んだことがあるのは『三日間の幸福』『いたいのいたいの、とんでゆけ』『恋する寄生虫』かな。

タイトルの「さくら」は平仮名だが、本作が意味するところは主に「サクラ」、いわゆる"仕込みの客"的なあれ。主人公の職業はマッチングアプリのサクラであるのと、またある種サクラに近いものとして架空存在「プロンプター」が登場する。

プロンプターとは、自殺するリスクが高い存在に寄り添い、自殺を未然に防ぐことを命じられた人のこと。人々の肉体や精神的な健康状態が測れる社会なので自殺リスクが高いとわかるとその周囲の誰かがプロンプターに命じられ、その人たちが寄り添うことで自殺を減らして行こうという試みだ。

このプロンプターの働きで本人が前向きに生きられることもあれば、逆にそれを知ってしまって(あるいはその事実はなくても疑ってしまって)せっかく出来た関係が壊れたり、より心を閉ざしてしまうケースがあることが語られる。この作品は創作だが、実際にあってもそういう弊害は相当大きそうだな……自分も読んでいて、新しい人物が登場する度にこの人は誰かのプロンプターだったりするのかな?と思いながら読んでしまったところはある。そうした犯人当て的なミステリ風味もある作品だった。

作中では大きく分けると、主人公の中学生時代の2人の友との思い出と、今の2つの時代が描かれる。回想の方は主に序盤にあってそれほど長くないのだが、非常に心に残る描き方がされていた。失われて二度と手に入らない、故に眩しい……みたいな(自分はそういうのに弱い)。そこに後悔のような恨みのような感情を抱えながら、またその時を思い出させる人物(2人の内の1人の妹)と出会いながら、主人公は行動していく。時間は巻き戻らないが、疑似的にあの時をやり直すような、失われたものを取り戻すような、そんな描き方だった。

「さくら」というと春のイメージだが、本作は"寒さ"の印象が強かった。作中の舞台は北国で、マフラー姿の少女が表紙にも描かれているし、作中でも凍死を試みる描写に強いインパクトがある。誰かと心中を試みるとして色々やり方はあると思うが、凍死を選ぶのはこの著者らしい気がする……諸々状況は違うけど『恋する寄生虫』でも極限の寒さで死に近づいていく描写があったな~(架空の外部要素による人間不信も含めて、本作と似た要素の多い作品かも)。

すいすいと読み進められて面白くはあったのだが、オチは(そのまま受け取るなら)薄々そうなんじゃないかと思っていたことが大体その通りという感じで、もう一歩意外性があって欲しかった気持ちがある。そこ以外にも色々仕込まれていそうな気はするが、初読時点ではそこまで読み取れず……