『さよならドビュッシー』を読んだ。めちゃくちゃ面白かった……こういう小説ですって説明はまあできるけど、本音は「面白いからとにかく読め!」って言いたい。
ミステリと音楽小説を掛け合わせた作品。「トリックがすごい」というタイプではないのでミステリの要素に期待しすぎずに、基本的には音楽小説として読むのがいいと思う。
ピアニストを目指していた主人公が火事で大怪我をして、そこから意地で這い上がってまたピアノを弾けるようになっていく、という物語。小説でピアノ演奏の描写をするのはなかなか難しいと思うが、その描写が鮮やかで、音楽の知識がなくわからず弾いている曲すら曖昧でも不思議と頭に入ってくる。演奏描写以外でも、例えば精神論的な会話や病状に関する会話などでも、妙に熱量のある台詞を書くのが上手く(内容の妥当性はともかく)引き込まれてしまう。主人公がほぼ歩けない状態から復帰していく物語ということで、身体障碍者を含めた弱く見過ごされがちな者の視点を描く話でもある。
前述したようにトリックは特筆すべきものではなく、ミステリを読み慣れている人なら(確信まで行かなくとも)頭に可能性がよぎりやすいものだと思う。ただ、過程の音楽描写が熱すぎて、段々ミステリ要素は「そんなのあったな」くらいに感じるようになってくる。実際主人公も「コンクールまで事件のことは忘れろ」と先生に言われるわけだが、読者(少なくとも自分)はその状態に陥っていて、作者の手のひらの上だった。
全てが明かされると、事件のために用意された舞台設定ではなく、むしろ事件も含めて1つの物語として完成することがわかる。狂気に一歩踏み込んでいるような熱量の物語とガッチリ噛み合っていて、それがラストにまで繋がる構成が美しい。
すごく面白かったのだが、これがシリーズ1作目で続編もいくつかあるらしい。どうやって続編を!?と思ったが、ピアノの先生(司法試験受かってるなど設定モリモリ)が別の生徒を指導するというパターンだったり、お爺ちゃんが亡くなる前に事件を解決するパターンだったり。何でもありすぎる!けどそれだけ人気作ってことなんだろうなぁ。