以前から気になっていたミルグラム。ちょうど第三審が始まる(始まった?)とのことで、YouTubeに置いてある動画(第一審/第二審のMVなど)を一通り観た。いや、面白いな……
ミルグラムを雑に説明すると、視聴者が看守となり、人の"死"に関わったとされる10人の囚人それぞれを赦すか/赦さないかを決めていくコンテンツ。赦すかを決める材料として、具体的な罪はわからないものの、囚人の心象風景がMVとして描かれるので、それを元に推測していくことになる。要は「MVをじっくり観て考察していくコンテンツ」だ。(ルール説明動画)
最初に第一審のMVを見て行ったわけだが、楽曲や映像の方向性がキャラクターごとに大きく異なるのがまず良かった。明るい映像や曲調もあれば暗いものもあり、そのどちらも人の死が絡んでいるという後ろ暗さは共通している。なんなら明るい方がむしろ恐い感じもあったりして、人によっては趣味が悪いと感じるかもしれないが、独特な魅力がある。キャラクターも性別年齢とある程度幅があるのも良いところだ。まだそこまで聴き込めてないが、特に耳に残ったのは「アフターペイン」かな……
第一審の最後には『第一審終了報告』というのがあって、ジャッカロープという兎が投票の結果を発表していく。自分の参加していない投票なので、そっちに投票した人が多いんや……と思いながら眺めるのはおもしろい。例えばまだ幼いから将来を考えるとここで反省した方がいい、みたいな意図で「赦さない」に入れる人もいたらしい。終了報告においてはジャッカロープが投票の意図を勘ぐったり、この結果で本当に良かったのかを煽ってくるようなコメントも差し込んできて、これも趣味が悪い(褒め)。視聴者の議論の様子も眺めたりしてるんだろうな……
第一審と書いてきた通り、ミルグラムには第二審、第三審もあり、第一審が終わっただけでは裁きを受けることはない。代わりに「赦す」とした囚人の思想は肯定、「赦さない」とした囚人の思想は否定され拘束を受けるのだという。第二審開始前には、こうした処置を受けた囚人の現状がどうなっているか説明される。
更には、新たに囚人の心象風景から描かれるMVも、この現状を大きく反映したものになっている。具体的には、思想を肯定された囚人には自分の行為を肯定する者が現れたり、否定された囚人には反省の色が見えたり、自暴自棄になる者も現れるという感じだ。加えて囚人間でも関係性が変化したり、否定された囚人に対し私刑を加える囚人もいたりする(そんなのありなのかよ)。なぜ三度裁定を下す必要があるのか最初わからなかったが、途中の裁定が下った後の変化も含めて大きな意味があるのだとわかってきて、なるほど~と思った。結末だけでなく、そこに至る過程も視聴者が選択していく物語なのだ。
最初のMVでは断片的な情報しか得られなかったのが、一度の審判を受けてまた異なる側面が見え、犯した罪やそこに至る状況がより推測できるようになってくる。第二審では結果が面白いように半分以上ひっくり返っていて、作り手の掌の上だ……となった。それを受けた第三審も、始まる前から大変なことになってそうですね。
投票者ではなかったのでまだ無関係面をしていられたが、投票をするならそこに責任が発生する。もちろん自分一人の票で結果は変わらないだろうが、それでもこのコンテンツの性質上責任を持とうとすべきだろう。そしてこういった誰かに裁定を下そうとする態度は、正義を名乗ったり誰かに私刑を加える囚人とどう違うのか?と考えずにはいられない辺りも、よくできているな~と思う。
まだ全然追えていないがボイスドラマとか小説もあるらしい。ミルグラム、オススメです。