小説『ミリは猫の瞳のなかに住んでいる』を読んだ。『バスタブで暮らす』等の四季大雅氏の作品だ。
ジャンルは……ミステリとSF風味のボーイミーツガール、になるんだろうか。演劇や仏教の要素も盛り込まれていて、この著者らしい盛り沢山な作品だった(ただ表紙の雰囲気からこの詰め込み具合を予想できる人はなかなかいないのでは……)。
タイトルの通り、ヒロインの少女「ミリ」は猫の瞳の中に住んでいる……ようなものである。主人公とミリでは過ごしている場所も時間の流れも異なっており、猫の瞳を覗き込んだときだけ彼女と会話ができる。ボーイ"ミーツ"ガールなのに彼らが直接会うことは基本的にない、というのが1つ特徴かな。
時代設定は、いわゆる「コロナ禍」。多くの人がマスクを着用し、大学の講義は基本リモートで~となっていたあの頃だ。今時そうした創作物は珍しくないと思うが、本書は2023年出版なので比較的早めではありそう。リモートでの「画面越しのやり取り」は、前述の猫の瞳を通してのミリとのやり取りと重なる部分がある。著者はコロナ禍の日々から、主人公とミリの設定を着想したのかもしれない。
基本的な目的は、殺人事件の犯人を突き止めること。主人公は(細かいことは省略するが)瞳を覗き込んで記憶を得る能力があり、それとミリからの情報を頼りに調査を進めていく。その流れで大学の演劇部に入るのだが、ここの演劇部の話が意外とウェイトが大きいというか、面白いところもあるが正直筆が乗りすぎてる感じがする……その反面ミリの存在感は薄めな部分もあり、ある程度意図されたものとはいえこのバランスは気になったかも。
最後に謎が明かされる気持ちよさはあるものの、基本的に事件解決のために動いているので読んでいる間の楽しさは著者の他作品には及ばないかなぁ……とはいえ物語の構造的には結構好きで、もう1回読みたくなる作品ではある。この著者の作品はどれも一読の価値ありですよ。