能 650年続いた仕掛けとは
能を初めて観に行ったのは2年くらい前。その時は予習もそこそこだったため、まあ雰囲気はわかった……くらいな感じだった。それからしばらくして先日、『アニメと能楽』というセミナーに行ったことで、能にもう少し興味が出てきた。
というわけで、なんか一冊読んでみるか~と思い読んでみたのがこの本『能 650年続いた仕掛けとは』。主な内容としては、能がおよそ650年間続いている要因の分析と、それを他の様々な事柄に活かせるのではないかという提案である。著者が能楽師なのもあり、能を自ら行うことの効能について語られているのが興味深い。例としては高齢の役者でも舞台に立ち続けていて健康に役立つだとか、戦国武将も舞を行ったことから心を整えストレスを行動力に変えるための術として使えるなどだ。江戸時代の頃は庶民のたしなみとして謡(能に添えられる歌)があり、通りすがった人と一曲謡って名も聞かず別れるなんてこともあったそう。(能に限らずだが)何事も自分は観る側だと思ってしまいがちで、自分がやってみるという発想はなかったなと思った。
能の長続きしている理由の一つは、能を大成した観阿弥・世阿弥父子が残した「初心忘るべからず」という言葉を体現しているからだという。実際能は幾度となく変化していて、(能のイメージでもある)ゆったりとしたスピード感は江戸時代に変化しそうなったというのは意外だった。
繰り返し語られているのが、能は観る者自身の内なる変化を感じるものであるということ。能に限らず、作品を向き合うとき大事なのは自分の心の変化だなとは思う。さらに能は、歌舞伎などと比べても舞台がシンプルであり、抽象度が高い。再現写実の演劇ということでもあり、時代性に縛られないが、ただ観るだけではわからず強く想像を働かせる必要がある(そのための補助的な手段の一つが、自分でも能をやってみる、らしい)。受け身で味わう瞬間的な感動とは異なる豊かさが得られるという言葉は、興味がない人からしたらやや傲慢と思われかねないと感じる一方で、能動的な姿勢で取り組むことで強く印象に残ったり記憶に残ることは確かだと思う。そう思って日記やブログを書いてるわけだし(そうかな)。
他にも能に関する興味深い事柄が色々と書かれていて、まさに欲しかった情報が得られて良い本だった。前述の『アニメと能楽』とも関わる情報があったのも良かった。
最後におまけだが、金沢では能が盛んで、日本で唯一の能楽美術館である金沢能楽美術館というのもあるらしい。今自分の中で金沢といえば蓮ノ空女学院だが、蓮ノ空女学院にも能楽クラブあるのかな……