2025/02/13 Ave Mujica 7話

たーんえー
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公開:2025/2/14

まだ全然飲み込み切れてはいないが間違いなく大きな区切りとなる回だったので、初見の印象を残しておく。ここ数話はAve MujicaというよりはMyGO、そしてCRYCHICの回という感じで、この後にある「Ave Mujica自体の話」に向けて、主にCRYCHICメンバーが過去の清算をする立ち位置の回だったのだろう。

なのでこの回で祥子は(モーティスでない)睦との対話に成功するが、モーティスと睦の関係や祥子の家庭など、背後にある問題は特に片付かないままだ。重要なのは、祥子が一度忘れた(と宣言した)睦に会おうとしたこと、一度忘れたCRYCHICメンバーと再び演奏し、「忘れない」と心の内で宣言したこと。祥子が自分を守るために捨てたものに再び目を向けたことが、同様に祥子が忘れたAve Mujciaにとっても大きな意味を持つはずだ。

前回や今回、燈やそよほどでなくともCRYCHICメンバーのことは気にしている立希が描かれた。それは、失ったものを忘れようとした祥子や、ビジネスライクな態度の海鈴との差を感じさせる。壊れたCRYCHICが一度限りの復活をした姿は海鈴に何かを感じさせたようだし、かつてMyGOのサポートメンバーとして海鈴を呼んだときに「前の方が忘れられないようなので」「応援してます」も、少なくとも燈から何かを感じて言った言葉なのだろう。次回からは彼女がピックアップされそうで、話も大きく動き出しそう(毎回動いてるけど)。

CRYCHICのメンバーが集まって、楽器やステージがあって、それだけ状況が整っても「もうその曲やんなよ」と言い出すのはCRYCHICメンバーの誰でもなく部外者の愛音だった。こういった(表現が難しいが)彼女の押しの強さに助けられっぱなしだなぁと思ったり、CRYCHICも外からの働きかけがあったら解散しなかったのかもなどと意味のない想像をしたりする。

燈の歌詞が苦手だったと語り、「人間になりたいうた」の歌詞をこれ以上読みたくないと感じていた(コミカライズ描写)そよさんが、新たな「人間になりたいうた」の歌詞を読んで笑えたのは、きっと良いことなのだと思う。演奏中、「人間になりたい」を聞いて口元が少し動いていたが、なんて言ったんだろう(わかる人教えて~)。明らかに祥子を見ながら歌う燈も良かったね。睦も、かつての春日影演奏直後と比べると笑顔で、ギターを歌わせられていたんだろうか……

この始まりの歌だけで終わっても自分は綺麗だとは思うが、やはり避けては通れないのが「春日影」だった。この曲が祥子のキーボードの音から始まるのは、祥子がみんなを引っ張ってきたことの象徴。MyGO版ではイントロからキーボードの音がないことで祥子の不在感が強調されたように感じたりしていたが、ここに来て祥子がかつてのように先陣を切らなければ始まらない曲として現れるのは面白い。同時に弾いたらバンドが解散する曲でもあり、祥子は実質的に自らせっかく戻ってきたCRYCHICを再び手放す決断をすることになる。このときの一人称視点は、MyGO3話の燈の一人称視点との対比かもしれない。この回、引っ張るそよさんとか「何でもする」とか、言い始めたらキリがないくらい過去回との対比がありそうだけどね。

春日影の演奏にモノローグが重なるのは好みが分かれそうとは思ったが、きっとここの演奏の出来不出来に意味はないのだろう。観客もわずかで、ただ彼女たちが終わったバンドであることを受け入れるための演奏なのだから。CRYCHICが「運命共同体」だと信じていたそよや立希が、CRYCHICは特別でも無敵でもない普通の、それでいて自分たちにとっては大切なバンドだったと語る姿は、直球ではあるがグッときた。祥子の「今日の演奏、きっと一生忘れませんわ」は、(前述したように)母の死やCRYCHICを忘れてきた祥子にとって、大きな転換点になるはずだ。バンドも、人との思い出も、永遠に続くことはなくても、忘れないことはできる。これは一生続けようとするMyGOとはまた違ったアプローチでの、永遠への挑戦かもしれない。燈は叫び、睦は演奏中の姿でモノローグをせずに済ませたのも良かったね。

自分はCRYCHICが好きすぎるので今回は流石に刺さる回だったが、Ave Mujicaの話ももちろん気になるので来週以降も楽しみだ。