2024/03/01 魔法少女育成計画

たーんえー
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魔法少女育成計画

魔法少女育成計画は、アニメ化もしているライトノベルシリーズ。既に続編アニメの制作も決まっていて、最近は朗読劇もやっている。昨年末に、最新刊「赤」が出ていたのだが、内容を思い出すために前々作「黒」から読み返していて、この前読み終えることができた。「赤」の話をしようとするとどうしてもネタバレになりそうなので、魔法少女育成計画というシリーズの話を少ししようと思う。

魔法少女育成計画(特に無印)は、魔法少女による異能力バトロワ、と表現すると伝わりやすいだろうか。この表現からすると能力を活かしたバトルが大きな魅力のように思えるし、アニメや漫画等の媒体ではそこがクローズアップされているだろう。しかし原作小説版の大きな魅力は、登場するキャラクター個々の思考を追う面白さ、言い換えるなら群像劇的な面白さだと感じている。本作に登場する魔法少女は、一人一人が固有の能力を持つことと同じように、一人一人が各々の考え方を持って行動している。それは過去から来るものだったり、生まれついてのものだったり、色々だ。多人数戦闘なら群像劇的なのは当然だろう、と言われたらそうなのだが、登場人物の思考のしっくりくる感が本作を良い群像劇として成立させているとも思う。地の文で登場人物の思考を表現することに最も向いているのが、小説である。

さて、本作をキャラクターの思考を追うだけで楽しい作品と紹介したが、次は本作でキャラクターの前に立ちはだかる2つの主要な脅威について話そう。「死」と「洗脳」だ。死とは、言うまでもなく思考を断絶させるものである。そのキャラクター特有の思考、感情、願い。そういったものは、死によって二度と取り戻せなくなる。思考を描くのが上手いからこそ、死の不可逆性をより感じるのである。そして、無印アニメでは未登場ながら、原作ではお馴染みの要素となっているのが、洗脳だ。洗脳とは、思考を捻じ曲げる行為。先ほどまで自分だけの考えで動いていたはずが、他者から強制的に介入され、更にそれで不自然な思考に変わっていることに自分では全く気付けない。洗脳によって、一人で抱えていた悩みが掻き消え、幸福に感じている描写すらある。本作の洗脳は非常に強力で、解除できる理屈が無ければ解除できない。その分、格の高い強者だけが扱える魔法になっている、というバランスだ。思考描写がしっかりしていることで、他者がそれを脅かすことによって尊厳が踏みにじられている感覚も、強く感じられるのだ。

最後に、本作の主人公の一人、スノーホワイトの魔法について紹介しよう。彼女の魔法は「困っている人の心の声が聞こえるよ」。この魔法は発展し、他者の思考を把握できるようになっていくのだ。人の思考が本作の軸となっているのは、こういったところからも感じられる。今日はこのくらいで。