2026/03/14 パリに咲くエトワール

たーんえー
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公開:2026/3/14

今日は、公開中の映画『パリに咲くエトワール』を観てきた!

20世紀初頭に日本からフランスのパリに渡り、画家/バレリーナとそれぞれの夢に向かって進む2人の少女の物語。

まず、物語の舞台であるパリを魅力的に描けていることは、この作品の大きな強みだと思う。キービジュアル等ではエッフェル塔が象徴的だが、その他にもフジコが暮らしていた集合住宅周辺や、叔父のお店への道のりなど、印象的な景色が多い。自分はパリのことは全然知らないが意外とぼんやり景観に見覚えがあるな~と思っていたけど、後から考えるとそれはミアレシティだったかも(何でもポケモンくん)。

キャラクターの動きも豊かで活き活きとしていた。食事のシーンも多く、フランスパンを食べたくなる映画だ(フランスパンと薙刀の細長さ、抱えたときのシルエットが少し似ているのちょっと面白い)。日常の描写に加え、特に目を見張るのが薙刀のアクション。動きにメリハリがあって、バレエシーン以上に見応えがある。薙刀が絡む場面は、自分がよく見るマイナー寄り競技物の味がして楽しかった。

また、音響面も強い作品だ。バレエだと踊りそのものに目が行きやすいが、踊るためには演奏が不可欠。本場の舞台は演奏も非常に力強く、この点でも劇場で観る価値があると思う。

物語としてはフジコと千鶴のW主人公なのだが、バレエ用語の「エトワール」がタイトルに入っている通り、作中の多くの時間を使い、千鶴がバレエを学びバレリーナへの道を歩んでいく様子が描かれていく。だがそれは決して、フジコの描写が疎かになっているというわけではない。自分はどちらかというと、千鶴のような目立った結果をなかなか残せないフジコの物語に心を打たれながら視聴していた(以下若干核心に触れているかも)。

フジコは千鶴が夢に向かうのを応援したり、生活に困っても働き口を見つけて何とかしたりと、優しさと強さを併せ持っている女性だ。だがそんな彼女でも、日々を生きるのに精一杯で絵を描く時間が確保できず、手を動かせずにいる内にいつの間にか自分が何を描きたかったかもわからなくなっていく。作中でも戦時下でバレエ公演の開催が危ぶまれたりしていたが、生活の保証、命の保証がない状態で芸術活動を行うのはとても難しいことだろう。現代の身近な話題としても、学生の頃は何らか創作活動に励んでいた人が社会に出て日々の労働で疲れ果て、創作活動から遠のいてしまう例は珍しくない。そうして描きたいものを失ってしまった彼女が、再びその情熱を取り戻す瞬間が真っすぐに描かれていて、現代を生きる我々にも通ずる普遍的な物語だと自分は感じた。

強いていうなら、終盤の大事な場面は3Dよりメリハリのある手描き作画で観たかったかもしれない。とはいえ、全体的に満足度が高く、誰にでも勧めやすい良作だった。自分はやっぱり労働に追われている社会人の方々にオススメしたいな……