天気が良く、ゴミ捨てや郵便物の投函など必要な用事もこなせたのになぜか気分が晴れない。眩しい日光に責められているような、焦りのような心持ちになる。
最近読んだ柚木麻子のエッセイ『とりあえずお湯わかせ』に、心身を緩める工夫として「簡単なものでもいいのでココアを作ること」が挙げられていたのを思い出した。ちょうど、以前健康のためにカカオが70%のものを買ったのだが、苦くてあまり手をつけずにいたココアの粉がある。それと砂糖と牛乳を片手鍋に入れ火にかける。ひたすら鍋をかき混ぜていると、なんとなく精神が落ち着く気がした。個人的に、ココアにシナモンがきいているとうれしいので少し加えた。
ココアについて考えていると、山田詠美『放課後の音符』を思い出す。高校生(だったと思う)の主人公の、おとなしい親友が歳上の男の人と付き合っていて、足首にきれいなアンクレットをつけている。このアンクレットがベッドの上で揺れるときれいなのよ、と「ココアにバターを落とすとおいしいのよ」とでも言うように教えてくれるシーンがある。中学生のときは潔癖なのもあり、どぎまぎして読めなかった本だ(同じ理由で沢木耕太郎の『深夜特急』も止まってしまっている)。作中に実際にココアが出てくるわけではないのだが、妙に印象に残っている。これを読んだあと実際にバターを落としてみたが、油が浮いているな、と思ったことしか覚えていない。
部屋の本棚には田辺聖子『孤独な夜のココア』もあったが、こちらはあまり内容を覚えていない。悪い記憶はないので面白かったのだろう。小川洋子のエッセイ『遠慮深いうたた寝』で田辺聖子についての記述があり、作品が気になっていたところだった。そのうち読み直したい。
高山なおみ『諸国空想料理店』にもココアが出てきた。眠れない夜にメキシコ風の辛いココアを作る、というレシピ付きの内容だった。ココアは寂しくて眠れない夜にうってつけの飲みものなのかもしれない。
このくらいかな、と思って作ったココアはまだ苦味が強かった。もう少し軽めで甘くしたいので、牛乳のみではなく水も加えて、砂糖も足すといいかもしれない。