揚げものの鱗、ふろふき大根

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公開:2024/7/9

 8時に目が覚める。今日は早めに起きることに成功したが、かなり眠い。ひとまず冷たい牛乳でミロを溶かして飲む。


 『kaze no tanbun 特別ではない一日』を読み終える。特に面白かったのが荒廃した日本で、年金を一向に受け取れず自給自足する老夫婦の話である岸本佐知子の「年金生活」と、幼少期の土曜日について思いを巡らす滝口悠生の「半ドンでパン」。滝口悠生は『茄子の輝き』で「もしかして芥川賞作家って何も起こらない日常を奇妙な人間にフォーカスして居心地を悪くさせる文章を書く作家!?」となっていたのだけど(これは直前に今村夏子『むらさきのスカートの女』を読んでいたことも悪い)『茄子の輝き』で、食事の描写だけは大好きだった。「半ドンでパン」では、その食事描写が遺憾無く発揮されていて、読んでいるこちらもうきうきとした。みずみずしくておいしそうな文章!

棚に目を移せば、カレーパンが、ピロシキが、油をくぐった衣を鱗みたいに跳ね立てている。(p.166)

美しい饅頭型のてっぺんに芥子の実をちょこんと載せたあんぱんの薄皮は、他のどのパンよりも淡く静かな光を放つ。(p.168)

『kaze no tanbun 特別ではない一日』「半ドンでパン」より

 皆川博子「昨日の肉は今日の豆」など、他の作品も面白いものが多かった。逆に苦手だったものは我妻俊樹「モーニング・モーニング・セット」で、白昼夢を見せられているような掴みどころのない文章に頭が痛くなってきて、読むのをやめてしまった。『こうしてあなたたちは時間戦争に負ける』のときも思ったけれど、詩的すぎる文章ってあまりよくわからないかも。


 せっかく8時に起きたのに、あまりに眠すぎて10時頃からお昼前まで眠っていた。ままならない肉体。

 どうしても魚が食べたくて、缶詰の鯖の味噌煮とごはん、昨日茹でたいんげんにマヨネーズをかけてお昼ごはんにした。青魚が好きすぎるし、副菜のいんげんもうれしかった。

 服薬の影響か、ここのところ無性に眠いのと、食べても食べても満腹にならない現象が続いている。季節的なものだといいのだけれど。


 松原タニシ『恐い食べ物』を読み終える。「死を招くオムライス」というのに惹かれて手に取ったのだけれど、期待していたパワーやトンチキさはなく、淡々と死の場面にあった食べ物やエピソードが述べられている感じ。個人的には全く怖くなかった。でも遺体が風化したであろう土が出てくるので、そういう生々しさを怖いと感じる人には怖いんだろうな。


 筋トレをした。いつもは下の動画をそのまま10分ほど行っているのだけど、明らかに筋肉や体力が落ちているらしく、動画が終わる頃にはへとへとだった。

 筋トレを終えた瞬間、若干気持ち悪くなり耳鳴りがした。運動で気持ち悪くなることがあまりなかったのでどうしたものかと戸惑い、座って休むことにした。1分ほど経ったら気持ち悪さも耳鳴りも楽になった。


 『安房直子コレクション3 ものいう動物たちのすみか』を読み終える。今回は連作短編が多かった。そして確かに動物は喋っているのだけれど、それよりもホラー味を感じる文章が印象に残っている。そしてホラーと同時に食べものの描写が多く、そのどれもがおいしそうだった。「ふろふき大根のゆうべ」のせいで、どうしても晩ごはんにふろふき大根を作りたくなったし、実際に作った。今回も面白かったな。次の巻もたのしみ。


 お昼にゆる民俗学ラジオの雑談回を二倍速で再生していた。途中で「理想のモーニングルーティンは?」という話になり「すっきりした味の紅茶に砂糖を入れないまま牛乳を入れるのが好き、あまり味のしないものが好きなのかも」みたいな会話がなされていて、試しに家にあった紅茶のユニオンジャックで砂糖なしのミルクティーを作った。今の気持ちにしっくりくる飲み物で、しつこくなくてうれしい。

 そういえば午後の紅茶の無糖ミルクティーも一時期ずっと飲んでいた。こういう味の飲み物が好きなのかも、と思う反面、体調や季節によって味の好みが変化する気もしている。最近はカフェオレがしっくり来なくなってきたので、気分に合う飲み物を探したい。

@urushino_nagi
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