映画みたいな小説

漆野凪
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 9時半に目が覚める。消退出血がはじまったので眠い。ミロを飲んでごみをまとめて本を読む。昨日キャッチボールをしたので、右腕と左足(とくにお尻)が筋肉痛になっていた。だるいけれど、予想をしない動きで痛むので面白い。お手洗いで股を拭こうとして2回ほど腕の付け根を攣った。

 11時頃にお腹が空き、ブラックベリーのジャムを塗ったトーストを2枚食べる。このジャムも母が新しく作ってくれたもので、前回のものよりとろみが強くて種が多く、カラメルのような香ばしい味がする。お湯を沸かす間に流しを片付けて、コーヒーを淹れてカフェオレにする。


 一日かけて劉慈欣『三体』(大森望、光吉さくら、ワン・チャイ訳 立原透耶監修)を読み終える。思っていたより宇宙の話で、数倍壮大だった。読みごたえがかなりあり、映画を観たような気持ちになっている。だからといって読みにくいわけではなく、専門用語などわからない単語も多いのに文章を読ませてくる力がある。壮大すぎるといまいちイメージできないこともあるけれど、これからどう風呂敷を広げていくのかが楽しみ。

 訳者あとがきで「中国語版初刊本と同じ順番にこだわりたい人は、第二部から読みはじめて、一三七ページ六行目まで来たら第一部を読み、そのあと一三七ページ六行目に戻ってください。かなり印象が変わるはず(ケン・リュウも語るとおり、エンターティンメントとしてはそちらのほうが読みやすいかも)。」とあり、確かにその方が読みやすかったかも……と思った。入りが1番読みにくかったので、読みはじめる前に知りたかったかも。

 読んでいる最中は汪淼が楊冬に対して「綺麗だ……お近づきになりたいな……」と思ってる描写があるな、と感じていたら汪淼が既婚者で驚いていたり、汪淼があんなに嫌いだった史強に安心感を抱き始めて内心「大史」(史お兄さんの意味らしい)と呼びはじめて萌え萌えになったりしていた。

 エヴァンズの父が幼き日のエヴァンズに「いまの地球の生物種が絶滅する速さは、白亜紀後期の比ではない。この現代こそ、ほんとうの大絶滅時代だ。」と語りかける場面で、先日読んだ梨木香歩の『エストニア紀行』に引用されている『国連ミレニアム エコシステム評価 生態系サービスと人類の将来』の「これまでの数百年の間に、人間は生物種の絶滅速度を、これまでの地球史で認められた典型的な絶滅速度の1000倍程度に増加させてきた」という文章を読んだな、と思い出した。

 またキリスト教は人間しか重要視しない、という話も少し登場して、日本民話の会/外国民話研究会編訳『世界の猫の民話』を読んだときにヨーロッパでは人間が猫に変身する・させられる話が、アジア圏だと猫が人間に変身する話が多く、キリスト教では結構動物の地位が低いイメージがあるので、宗教観の違いなのかな……と考えたことも思い出された。

「ドアの前で立ち止まると、急に妙な感覚に襲われた。夢見がちな少年時代に戻ったような気分。記憶の底から、くすぐったいようなさびしさ、薔薇の色合いを帯びた朝露のように壊れやすくピュアな感情が湧き上がってきた。」

『三体』劉慈欣 p.128より

 上の文章は『三体』で1番好きな描写。「薔薇の色合いを帯びた朝露のように」というところが素敵だと思う。


 フォロワーがおすすめしていた紺津名子さんの『サラウンド』が無料公開されているらしい。5話まで読んだけれど、かなり好きなタイプの漫画だった。うれしい。なんとか最新話まで読みたい。

@urushino_nagi
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