半日ほど眠る

漆野凪
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 起きたら11時半だった。昨日眠りについたのが23時半くらいだったので、およそ12時間寝ていたらしい。普段は22時半頃に寝付き朝8時前くらいに起きているので、それでも9時間ほど眠っているのだが、12時間は寝すぎな気がする。しかし、寝過ぎたとき特有の怠さや頭痛は起きていない。気圧や服薬の関係か、はたまたロングスリーパーなのか。天気はいいようだが、窓の外ではごうごうと風の音がしていた。

 歯を磨いて、お湯を沸かしてカフェオレを飲む。朝はなんとなく胃にものを入れる気が起きない。特に1人でいると、固形物を口に入れるのが億劫に感じる。プロテインとかで3食終わらせてしまいたくなる。体調を崩すのでしないけれど……。ぱらぱらと本をめくるも、なんとなく落ち着かなかったので食器を洗い、炊飯器のお米をはらい、晩ごはん用の炊飯予約をセットして、掃除機をかけた。はらったごはんは焼いたししゃもとマヨネーズと七味でおにぎりにして食べた。自分が動けている事実がうれしい。果物も切ろうかと思ったが、冷蔵庫の中身がいっぱいだったのでやめた。

 Twitterで「高松城のお堀は海と繋がっていて真鯛が泳いでいる」という旨のツイートを見る。お堀に鯛が泳いでいるなんて!と心が躍る。城下町ではあるけれど内陸部に住んでいる身としては、海があるというだけで憧れなのに、さらに城のお堀が海に繋がっているなんて、そんな竜宮城みたいな夢物語があっていいのか。死ぬまでに一度は見てみたい。

 少し前、図書館の休館により、貸し出し期限と冊数が増えていたので高瀬隼子『おいしいごはんが食べられますように』、平坂寛『喰ったらヤバいいきもの』、小池陽慈『ぼっち現代文』、大崎遥花『ゴキブリ・マイウェイ』を追加で借りた。後半2冊は最近出版された気になっている本で、まさか図書館に入っているとは思わず小躍りしてしまった。今は『ゴキブリ・マイウェイ』を読んでいる。クチキゴキブリの研究についての本なのだが、語り口が面白くまだ冒頭なのにわくわくしてしまう。カバーのそで(折り返してあるところ)に本文が引用されている。研究が楽しそうな様子が伝わるいい文章だ。

翅の食い合いはするし、卵胎生だし、子育てもするし、浮気もしない。それぞれ一つだけでも面白いのに、それらを「全部盛り」してしまっためちゃめちゃ面白い生き物、それがクチキゴキブリなのだ。この生き物を研究せずして何を研究すると云うのか?

大崎遥花『ゴキブリ・マイウェイ』より

 最近読み終えた本は、借りてきた高瀬隼子『おいしいごはんが食べられますように』、平坂寛『喰ったらヤバいいきもの』の2冊と一穂ミチ『スモールワールズ』、島本理生・辻村深月・宮部みゆき・森絵都『はじめての』、川上和人『そもそも島に進化あり』の計5冊。

 高瀬隼子『おいしいごはんが食べられますように』は、芥川賞ということもあり少し距離を置きながら読んだ。芥川賞は何も起こらないのに人間の悪いところを煮詰めたような生活の文章が出てくる。唯一好きなのが村田沙耶香の『コンビニ人間』で、これも人間の悪いところが滲み出ているような生活の話なのだけれど、起承転結がはっきりしているところと、主人公がだれの理解も必要とせず突き抜けているさまが爽やかだった。『おいしいごはんが食べられますように』は途中まで人間関係のやるせない部分が語られて「やっぱり芥川賞作品は苦手なのかも……」と思っていたのだが、ラストでかなり好きになった。主人公は一生「おいしい」にかかるコストを支払い続けていくんだと思う。

 平坂寛『喰ったらヤバいいきもの』は、以前読んだ同著者の『外来魚のレシピ』より好みの内容だった。フナクイムシやオオマリコケムシなど、珍妙な生き物が多かったからかもしれない。特にフナクイムシの食べ方が衝撃で、体の先端を指でちぎって体中の食べカスや泥をしごきだし、軽く海水ですすいで踊り食いするらしい。しかもおいしいらしい。

 一穂ミチ『スモールワールズ』は、短編集だった。本当は『光のとこにいてね』が読みたかったのだが、図書館で見当たらず同じ作者の本を手に取った。読みやすく、どれも好きな内容だった。特に好きなのは1番最初の短編「ネオンテトラ」だが、身長188㎝、足は28㎝、岡山弁で格闘技にスカウトされあだ名が「魔王」の姉が、モーゼのように人波を割って登場する「魔王の帰還」も面白くて好きだ。

 島本理生・辻村深月・宮部みゆき・森絵都『はじめての』は、それぞれの作者がはじめて〇〇をしたときに読む本、とテーマを決めて書かれた短編集。儒烏風亭らでんさんが月に課題図書を挙げてくれるのだが、少し前に掲載されていたので気になった本。読んだ感想としては、しっくりこなかったな〜という感じ。中学生くらいで読みたかった。コンセプトとして、読む対象の外にいるような気がする。辻村深月「ユーレイ」と森絵都「ヒカリノタネ」が比較的好み。

 川上和人『そもそも島に進化あり』は、島ができるメカニズムから、その島に生物が上陸して生態系が確立される様子などをコミカルに解説した本。面白く、かつ学術的なことをわかりやすく解説してあって良かった。ただ内容が脱線しやすく、冗談が間に受けそうな文体で書かれているので少し混乱するのと、読んでいて疲れる。しかしその脱線のおかげで、夕張メロンの品種名が「夕張キング」だと知れたりするので侮れない。解説が万城目学さんなのだが、読みが「まきめまなぶ」だと知ることができた。ずっと「まんじょうめがく」だと思っていた。

 現在読んでいる『ゴキブリ・マイウェイ』と『そもそも島に進化あり』のどちらでも、「ポケモンの進化は生物学的な進化ではない」ということが語られる。生物学的な進化は「世代を経て形質が変化していくこと」で、ポケモン世界での進化は同一個体での変化なので、その点が異なるらしい。別々のルートで手に取った本に似たようなことが書かれていると、巡り合わせのようなものを感じてうれしい。

@urushino_nagi
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