怖……はるくんそれ今はもう大丈夫なの…？え、ああ次僕？怪談かあ、僕全然霊感とかないし幽霊も見たことなくてさ。う〜ん...あ！いのまえくんの話みたいな幽霊とかが出てくる話じゃないんだけどいい？怖くは…ないかも？わかんない、人生で一回も人に話したことないんだよね。…ねえやっぱり電気付けない？幽霊来そうで怖いよ〜、だめ？だめかあ…じゃあだれか手繋ご。へへ、みんなありがと。
えっと…僕のお母さんが病気で死んじゃったっていうのはもう知ってると思うんだけど、ある日突然とかじゃなくて人間ドックで病気が見つかって入院してーって感じなんだよね。でその、お母さんが入院してるときに、ちょうど今ごろの、五月？ぐらいに普通に夜寝たら夢見て。
それが、実家の大きいソファーの上でお母さんが僕のこと抱きしめながら今までありがとう、ずっと大好きだよ、啓はわたしの自慢の息子だね、みたいに今までの感謝とか褒め言葉とか、普段だったら恥ずかしくて言えないようなことをすごい言ってくる夢で。夢の中なんだけど僕も感極まって泣いちゃって。起きてからも涙止まらなくて、いい夢見たなあとか思ってたんだけど、冷静に考えたら死ぬ間際のお別れじゃんこれ！って思って、すごい嫌な予感してさあ。急いで病院行って、でその時8時ぐらいだったからギリギリ面会時間じゃなかったんだけどナースさんの温情で面会させてもらったんだよ。
そしたらお母さんピンピンしててさ〜…僕の嫌な予感って当てにならないなとか思いながらこういう理由で、ってお母さんに夢の話してたらさ「それおかしくない？」って言われて。家に大きいソファー置いたこと一回もないよ、どこの家なのそれって。言われてみればそうだなって、夢の中の家思い出したら確かに知らない家かもしれなくて。実家に白い棚なんてなかったよねとか、ラグの柄違うとか、不思議…不気味の方が近いかも。
お母さんにも言えなかったんだけどね、夢の中の人すごいベリーショートで。僕のお母さん、ロングヘアが自慢の人だったから、僕の記憶の限りではベリーショートにしたことないはずなんだよね。もしかしたら僕を産む前はベリーショートにしてたのかもしれないけど。でも僕を産む前のお母さんが僕の夢の中に現れて、今までありがとうって言うのもなんかおかしいじゃん。
その夢見てから一年半後ぐらいかな、お母さんは…うん、いなくなっちゃったんだけど。じゃあ尚更あの夢はなんだったんだろう。もう5年ぐらい経つけど、まだあの夢の中の家はどこかわかんないし、夢の中のお母さん…は誰なのかわからなくて。
これでおしまい！怖い話っていうか、不気味な話だったかも。怖いこと言わないでよ！幽霊がいたらりおんちゃんに取り憑きますように、あっ、枕投げないで、あはは、ごめんごめん、次はののかちゃんだよ！どうぞ！
(未だにその夢を見るとは、言えなかった)