人類の至上命題として、生産性の向上がある。人類はいずれグレートフィルターを突破し(すでに突破しているのかどうかは置いておいて)、地球寿命を超えて文明を存続しなければならない。種の保存には生産性の限りない向上が不可欠である。
ということで、会社、ひいては社会で働く最もらしい理由は生産性向上にある。世界経済のインフレ・デフレも生産性に強く影響するし、もっとミクロ、個人がどれくらい便利で豊かになれるか、という点において、可処分時間を増やすのには生産性の向上が大切になる。
では生産性に寄与しないものは仕事ではないのか、極論不要なものなのかと言われると、現代ではそうではない。人類はQOLという言葉を発明し、いわゆるエンタメの必要性を定着させることができた。生産性を上げることに終始していては、種を保存するどころではなくなるということだ。
インターネットの発達によって、自分の周り以外の人環境がどのようなものなのかを簡単に知れるようになった。インターネットでは誰もが成功者にも悲劇の主人公にも見える。不平不満を募らせ、もっと自分を大切にしたいと思えるようになったことも、多少なりとも影響があるだろう。
いわゆるtoBや課題解決と言われる軸の事業は、主に生産性向上を目的とする事業を展開するのに対して、toCや付加価値提供を行う会社はQOLの向上を軸とした事業を行う。後者には今やストリーマー等の配信コンテンツも含まれるだろう。エンタメは、人類の発展になくてはならないものとなった。
任天堂は2014年に、任天堂の定める娯楽の定義を人々のQOLを楽しく向上させるもの、とした。軸になるのは健康で、任天堂らしい答えだった。
生産性の向上とQOLの向上は二項対立ではない。むしろ、QOLの向上は結果として人々の生産性を向上させ、生産性が向上することで経済が活性化し、巡り巡ってQOLも向上する。この2つの至上命題をうまく循環させることができなければ、人類の発展は停滞してしまうかもしれない。
もし自分が働くことに迷ったり、なぜ働いているのかが分からなくなったら、長い循環の先に自分の生活の質向上と人類の発展があるのだ、と思い返しても良いかもしれない。そして、どんな仕事をしたいのかと自分に問う場合、どちらに貢献したいのかという軸にもできるかもしれない。