雨上がりの帰宅

あめ
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 うちの猫は、勝手に窓の鍵を開けて出ていってしまう。そして、網戸を開けて勝手に入ってくる。

 だもんで気づいた時には脱走されていて、開けっ放しの窓から入り込んだ野良猫が我が物顔で寛いでいる事も屡々……。最近では件の野良猫まで網戸を開けることを覚えてしまい、換気中に、ガガッ。とズレる音が聞こえることも。

 飼い猫が脱走中に雨が振った場合、やむまで帰って来ない。「濡れたら風邪をひくから、濡れない所に避難するんだよ。やんだら帰っておいで」と言い聞かせているからだ(人間が発する言葉の意味を把握しているのでは? と感じる事が多いので、私はニャンに対して甥っ子達に噛み砕くように話し掛けたりしている)。その甲斐あってか、ニャンは雨が確実に上がったら帰ってくる。

 雨上がりの翌日、時刻は夕方のちょっと前。2階の自室でPCを弄っていたら「にゃーん……。にゃーん」と控え目な鳴き声が聞こえた。下におりると、台所の窓が開いている。飼猫の姿を捜していると、「にゃ、にゃ……」と足元で鳴いた。敷物と同化していて見えていなかったようだ。

 ニャンはアピールするようにゴロゴロ擦り寄ってきた。きっと山で雪でも降っているのだろう。その証拠に、抱っこしても逃げない。確かに今日は何となく冷える。猫のぬくもりは冷えた身体に染み渡った。

 ゴロゴロ、ゴロゴロ喉を鳴らして頭を擦り付けてくるニャンを撫で続けていたら、突然噛み付こうとしてきたので咄嗟に避けた。静まり返る空気。「今、噛もうとしたよね?」そう尋ねると、頭を擦り付けてゴロゴロ喉を鳴らし始めた。

 暫くして欠伸をしてみせるニャン。流れるような動作で私の手に噛み付いた。「ああああ!!」私が呻くとゴロゴロ音が大きくなる。グッと牙が食込む力も強くなる(それでも十分加減されている)。そんなに私の手は美味いのか?

@utakata
腐敗しながらゆったりまったり一次創作をやっていますが、創作以外の事もここでは書きます。 ▲創作物の案内サイト→hakoniwanorakuen.jimdofree.com