自分の知らない街を訪れることが昔から好きだった。
3列独立の席をとって、夜行バスで揺られながら知らない街へ向かう夜がどうしようもなく好きだ。深夜に降り立つサービスエリアでぼーっとしながら夜風にあたる時間は、頭が空っぽになって好きだし、朝6時前に到着した場所でまっさらな空気に触れる瞬間、また新しい私に出会えるのだとわくわくする。
カーテンに遮られたあの狭い空間でイヤホンから流れる音楽に包まれる時間は、世界でたったひとり、私だけが起きていると思えて不思議と安心できた。誰とも繋がっていないと感じる時間も私には必要だった。
長い距離の移動はのんびりできて好き。辿り着く時間が朝になる夜行バスは一等好き。