春を厭う

るり
·

気温の変化が大きくてふわふわするのに頭が締め付けられるような感覚がする。春だ。春が来ている。

私は、春が怖い。正しくは春が来ることを恐れている。暖かくなって、光や空気が春を含んで重たくなるように感じるのは、春が携えている命の重さなのだと思う。

そうやって、たくさんの命の芽吹きや変化が一気に押し寄せてくる春は、いつも受け止め切れなくて心身の調子を崩してしまう。容赦なく、心の器から溢れていく透明な水をなすすべなく眺めてワンルームの片隅で、春の気配に怯えながら暮らす2、3月。指先から少しずつ春に慣らしてひっそりと呼吸を繰り返していた。

春に巡りくる光は、冬から流れ着いたもの。冬の光は、秋から届いたもの。秋の光は、夏から溶け出したもの。夏の光は、春から溢れたもの。春の光は。

日々は地続きで、この光も、空気も、緩やかに続いている。形を変えても、受け取ることができる範囲が変わっても、根底を流れるものは変わらないのだと気づいた時、少しだけ楽になった。春は相変わらず怖いままだけれど。

@utatane
撮ったり書いたり考えたりしています ✍️bluesky: bsky.app/profile/utatanest.bsky.social 📸 instagram: www.instagram.com/utatanest