買う人が幸せになるものだけを売りたかったな株式会社
出社するリングライトの天使たち その光輪を目から剥がして
花のないロビーに惑う蝶のため 夏への自動扉を開く
スリッパがなんら進化をしないのでヒトから進化してしまいそう
かなしみを混ぜてみせてもマスクだとほほえみばかり伝わるみたい
おだやかな沈黙を浴びてしまってやわらかくなる紙のストロー
幼名で呼ばれ頷く 母さんじゃないひとたちがいつまでも呼ぶ
国という仕組みにそって夜をゆく たっくすたっくすみんなわらって
にんげんの悪いニュースを学び終え明日のニュースはもうできている
最低な人を最低賃金にしたって秒で起業するよね
残された星座の場所が狭いけどらっこもひとも飾れそうです
はつねつの戴冠は熱かったとか軽かったとか 語る王たち
ごみ箱のように心をひらくとき吹き込んだ詐欺メールは揺れる
コンビニを出てった煙草(02番)とあの客( 番)が煙で真名を交わすくちづけ
おなまえは その美しい質問があらしに投げる花束だった
気持ち良くでこぴんできる行列に並んで打って、並んで打った?
スルーりょく精神りょくがたかいのでろっかげつほど耐えたごみ箱
咲いたまま黒ずんでいる決められた花言葉から逃れた椿
てっぽうも折れそうにないこの紙を一票未満のままで投じる
申請の神エクセルで下賜された記者腕章に帯びる神性
三世代蒸留された国民が漂っている霧の国会
黒塗りの行政文書その黒に溺れつづける文字の海鳥
花まるを欲しがりすぎる総裁がぐるぐる黒い花で見えない
裕福なお金があった 裕福なお金はずっとそこで暮らした
美しい国なんてない端っこの切り取り線で破きあうなら
ドローンが誰かの意思で散らばって星座に擬態するような夜
バラのないトゲが欲しいと思うのはまた脱毛に通う週末
ふるさとが遠くちぎれているひとを大きな縁を描いて思う
歩き出す わたしの予報円よりもはるかに広いこどもは持たず
よくしゃべるオーブンレンジがおだやかに季節の花を鮭に教えた
了
Flower Sale in Memory, 2022 / KIMURA Hiro