兄妹短歌(あに・いもうとたんか)
兄妹の花の香いのあまい蜜ふたりで満ちた小さな宇宙
僕らは睡るしろい繭 結んだこの手は朝まで一緒
寝台は方舟に似てる僕たちを遠くへ連れだす宇宙船にね
僕らには秋は来ないよ永遠に泥濘の春乳白の檻
横顔はオーダーメイド神様はいない世界は兄さんと僕
名をくれたお前の微笑いがおれの幸福護るよたとえ世界を棄てても
愛と心臓、たっぷりの砂糖スパイスは要らないあとは蕩けあうだけ
魂よ比翼連理なるは新世界連理の枝でわれらは出逢う
兄さんがつくる朝食、微睡みから僕を目覚めさせる音
愛してるたった五音が蕩かすこころ 知っているよと僕は微笑む
ふたりきり満ちた世界の湖満ちる泡沫永遠我らは微笑う
普通とは逃れられないまなざしだ はやく宇宙船に乗り込みたいな
心臓のあまやかな赤を見詰めてる僕らの鼓動よ一緒に巡れ
ぬばたまの夢をともに見、眼を閉じる我ら向かうは聖なる荒野
赤い弓林檎の谷を軽やかに渡る鵲何処までも飛べ