映画に行きたい。
窓ぎわのトットちゃん。児童の頃に青い鳥文庫のそれを繰り返し読んだ。いわさきちひろの震えるような主線と水彩で描かれた表紙。当時の自分は本は厚いほどいいという価値観を持った子供だったので(思い返せば児童向け新書のため、文字の大きさや余白などに気を配られた故の厚さであることはわかるがそれを差し引いても)子供の手には重く感じる、心躍る厚さの本だった。
もう長いこと読んでいないので全体的にうろ覚えではあるのだけれど、食べ物の話が好きで、等々力渓谷のハンゴウスイサンやお弁当のフタに落とされる煮っころがしの描写は何度もなぞった記憶がある。小林先生が生徒のお弁当箱を覗いて“海のもの・山のもの”どちらかが足りていなければをヒョイと追加していく描写、この食材の分け方に衝撃を受けた。世の中の食材を、肉・野菜、炭水化物・たんぱく質、などではなく、海・山というこれ以上なくザックリと分類してしまう。こんなおおらかなで自由な分類をする大人がいるのか、いていいのかと子供心に思った。余談だが陸ではなく山というのがとてもいい。海と山、我ら長いこと島弧に住み着く生き物である。今でもたまに思い出しては、ちくわでも追加しておくか…と冷蔵庫を開けたりすることもある。ちくわは焼いて食べるのが好きだ。チーズ入れてもうまいよね。揚げるとぷくりとふくらんで、それもまたおいしいかわいい。
キャラメルの自動販売機やスルメを炙るという行為もこの本で知ったと思うのだけれど、最近のインタビューでスルメイカの話を読んだときは涙ぐんでしまった。八十年前の、おなかを空かせた子供の、誰にも責めることのできない行為。それをご本人がいまだに心から悔いている。本当に、戦争などしてもろくなことにならない。
色々と足が重くて映画館から遠ざかっているけれど、元気出たら観に行きます。