女言葉

蟒蛇
·

女言葉が嫌いだ。フェミニズムのフェの字も知らなかった小学生時代からずーっと嫌いだ。

小学生の時に好きだった漫画の二次創作(夢小説)を読む時に、主人公が女言葉を使っている文章は頑なに避けていた時期があった。それくらい大嫌いだった。

12歳くらいだった当時はこの嫌悪感を的確に表現する言葉を持たなかったので、とにかく嫌いだとしか言いようがなかった。大人になってたくさんの言葉を手に入れた今、当時の自分の心情を再現するならば、「どうして女キャラだけみんな同じ語尾で描かれなければいけないんだろう、しかもその語尾がものすごくダサくて二重に最悪」といった感じだろうか。

時は過ぎに過ぎて去年末のこと。朝日新聞のPodcastの中に女言葉について語る回があったので、気になって聞いてみた。そのエピソードでは、女言葉にはジェンダーの不均衡が反映されているとしつつも、小説ではその人物が男女どちらなのか示すための目印として使っている面もあるらしく、それなら納得だしいいのではないかという結論にふわりと着地していた。

それを聞いて思ったのは、ある登場人物の性別が(すぐには)分からなかったからと言ってそれが何なんだろう、ということだ。よくフィクションに登場する性別不詳設定のキャラをウェブ検索したりすると、サジェストに必ず「性別」と出てくるが、あれも個人的にすごくウンザリしている。まぁ何となく気になって検索するだけなら、公式で設定されているのかどうかの確認作業として納得できなくもないけれど。不詳とか無性別という設定が明確にされているキャラが「男」なのか「女」なのか「議論」までし始める者に関しては、さすがに理解に苦しむ。

なぜキャラクターの性別情報が分からないと不安になり、分かると安心するのか。なぜ容姿や性格などその人物を詳細に形作る情報が出揃っている場合においてすら、必死になって性別を調べたがるのか。そのあたりを深く考えて向き合ってみることで得られるものは、とてつもなく大きいと思う。ぜひ一度考えてみてほしい。

女言葉という表象には、「男性」をノーマル、「女性」をイレギュラーとして特徴づけをするセクシズムの問題がある(有徴化・無徴化)。書き手は無意識で行っている場合が多いだろうけども、これは単なる「便利な書き分け」ではない。

なぜ短気な読者の干からびた想像力を補完するために、「女性」という属性を錆びついた鋳型に丸ごと押し込められなきゃならんのだ。やっぱり自分は女言葉が嫌いだという気持ちを新たにした。

@uwabami
オタクィアフェミニスト。社会やら趣味やら雑多に語ってます。 詳細なプロフィールや語りの傾向は固定記事にて。