Aロマンティック・アロセクシュアル(編集 2024/05/17)

蟒蛇
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2024/05/17

タイトル含め、以前まではロマンティック/セクシュアル/アロマンティック/アセクシュアルと表記していたものを、アロロマンティック/アロセクシュアル/Aロマンティック/Aセクシュアルというより正確な表記に修正しました。

文章の内容に変更はありません。

透明人間にされがちランキングで8位くらいにランクインすると思う。1〜7位が何なのかは知らない。

アロロマンティックは、他者に恋愛的に惹かれる者。Aロマンティックは、他者に恋愛的に惹かれない者。アロセクシュアルは、他者に性的に惹かれる者。Aセクシュアルは、他者に性的に惹かれない者。

Aロマンティック・アロセクシュアルは、他者に恋愛的には惹かれないが、性的には惹かれる者。

最近のフィクションでは、Aロマンティック・Aセクシュアルのキャラクターは少しずつ出始めているように思う。SNSで「この作品にAロマ・Aセクが出てきたよ」という投稿を目にする機会が増えた。

だけど、アロロマンティック・AセクシュアルやAロマンティック・アロセクシュアルは相変わらず透明人間にされたままのような。セックスは恋人や配偶者とすべきである/恋人や配偶者とは当然セックスをするものであるという既存の性規範から「はみ出し」ているせいか、前者なら「ただの性嫌悪でしょ?」「恋人が可哀想」などと言われ、後者なら「ヤリモクってこと?」「セフレと何が違うの?」と言われることがある。どうしてこう、新しく知った概念を無理やりねじ曲げて既存のフォルダに押し込もうとするのだろう。新規フォルダを作成してくれ。

自分自身がAロマンティック・アロセクシュアルに近い(厳密に言えばグレイロマンティック=グラデーションの中のどこかに位置する)人間なので、そっちに寄せた話をする。

なぜAロマンティック・アロセクシュアルが「ヤリモク」や「セフレ願望者」と言われるのか、理屈自体は分かる。セックスは恋人や配偶者とすべきであるという規範があるために恋愛とセックスがベッタリとくっついてしまっている感覚の人が大勢いて、そういう人の頭の中ではセックスしたいということはその者と恋愛関係になりたいということになり、恋愛関係は望まないのにセックスはしたい者は「正当ではない」という烙印を引き受ける代わりにセックスを楽しめるセフレという関係になるしかないということになっているんだろう。

丁寧に丁寧にすり込まれてきた社会規範のせいで、本来そこにあるはずの、あってもいいはずの選択肢が見えなくなってしまっている。セックスと恋愛は必ずセットであるという一見「普通」に思えてしまう価値観は、自分でも気づかぬうちに(社会によって)他のたくさんの価値観を切り捨て(させられ)た上に成り立っているものなんじゃないだろうか。

もちろん、思考の末「普通」とされている価値観に沿った行動を選ぶことは間違いではない。けれど、それを他者にもそっくりそのまま当てはめようとするのは間違っている。まして、正常・異常の判断基準として使うなんてのは言語道断。差別的な発想だ。

Aロマンティック・アロセクシュアルが望む関係性は、自分の場合は「セックスをすることもある親友」だ。Aロマンティック・アロセクシュアルにいいイメージを抱かない人たちは、恐らく「冷めてしまった恋人から肉体だけは搾取する」という構図に近いものを思い浮かべているんじゃないだろうか。違う違う、イメージ的には「友人と友人のままセックスもしたいことがある」の方が近い。何も冷めてない。

恋人との大きな違いは恋愛感情の有無、セフレとの大きな違いは将来性……とはいえ、同じAロマンティック・アロセクシュアルでもみんながみんな同じ感覚を共有しているわけではないし、セフレにだっていろんなタイプがいるだろう。Aロマンティック・アロセクシュアル=セフレ願望者という安直な図式はズレているけれど、現状セフレ関係を求む者の中には、自分がAロマンティック・アロセクシュアルであることに気づいておらず、既存の形態で最も近いあり方としてセフレを選択しているだけの者もいるんじゃないかと自分は思ってる。

なぜそんなことになるかと言えば、やっぱりこの社会が恋愛至上主義かつ正しいカップル・ふうふのあり方という規範が極めて強いせいで、他の選択肢や可能性がすべて隠されてしまっているから、ということになる。

相手との関係性とセックスの有無の組み合わせは、本当は無限大のはずだ。セックスをしない友情、セックスをする友情、セックスをしない恋愛、セックスをする恋愛、セックスをしないふうふ、セックスをするふうふ、あるいはワンナイトと言われる関係、セックスを軸としたセックスフレンド…… すべての関係者が合意の上で満足しているのなら、どれも間違いなどではない。

なぜこの文章を書こうと思ったのかというと、自分と同じAロマンティック・アロセクシュアルの人の言葉が見てみたくてウェブ検索をかけた時、しつこく探し回ってようやく体験談を一つ見つけることしかできなかったから。泣いた。

要は、マイナーオタクなどによくある「自分がこの寂れたジャンル内に一つでも多く作品を残してやるぜ!(涙目)」の気持ちが原動力よ。

ちなみに下の画像は2020年に行われたアロマンティック/アセクシュアル・スペクトラム調査の結果なのだけど、この調査の中でAロマンティック・アロセクシュアル(アロマンティック・セクシュアル)は5.5%となっている。

アロロマンティック・Aセクシュアル(ロマンティック・アセクシュアル)10.4%のさらに半分。そりゃググっても何も出てこないよね……

@uwabami
オタクィアフェミニスト。社会やら趣味やら雑多に語ってます。 詳細なプロフィールや語りの傾向は固定記事にて。