※2023/08/26に書いたものを加筆修正した文章です。
悪政を行う政党に投票してしまう人を愚か者認定して切り捨てるような発言をしている者たちを見て、一瞬同調しそうになりながらも、「長い目で見たらそれってまずいのでは……」と思い始めて書いた思考整理文です。
クソな政治家を落とさずに選んでるのは有権者なんだから結局は有権者が悪い論を見かけるたび、でもそれって政治や人権に関する教育が不十分な中でも自力で不当な扱いをされていることに気づけた「運のいい者」だけが的確に抗えるという、不公正な現状を肯定することにもなるのでは? と思った。
何が正しいか選ぶための判断材料すらロクに渡されない状態で選択をしろと迫られる構造がそもそもダメすぎる。
今の低すぎる投票率&特定層に有利な選挙システム&カルトや利権企業の組織票などもある中で、有権者が選んだ政治家と表現するのは的確なんだろうか、とも思う。
選挙って何を考えて投票したのかという部分は積極的に口にしない限りは不透明なのがデフォルトで、どこの政党/どの政治家にどれくらい票が集まってるのかという数字しか明確には分からない。
今も自民党に投票している人の中で、いったいどれくらいの人が「常に最新の情報と知識を備えた上でそれでも自民党を選んでいる人」なんだろう。もしも自民党を跳ね除けるための気づきが足りない人が多数なのだとしたら、そういう人たちが気づきを得るために必要なことって「おまえのせいだ」「おまえが悪い」と怒りに任せて罵ることなんだろうか。
教育に手を突っ込んだり、本を隠したり、市民運動を潰したりして、考える力や材料すらも根こそぎ奪い取ってくるやつらが長年政権を握ってる今の状況でも、自民やそれに準ずる者のヤバさに気づいてNOを示すことができている「聡い」人たちが、自分たちの特権的な部分に向き合わずに「あんなに愚かな政党を選ぶなんて愚かな者たちに違いない」と投票者を単純化して切り捨てるのは危険だし、それじゃあ現状を変えるどころか体制側の思うつぼになる……と、今の自分は思う。
また、よく言われる「無投票が自民党を支えてる」っていうのも、人々が自民党のために積極的に選挙権を放棄しているわけではなく構造的な意味での結果論だし、じゃあそもそもなぜみんな選挙に行かないのかというと、政治参加の重要性と権利(人権)について詳しく教わる機会がなくて放棄するとどうなってしまうのか実感がわかないとか、経済的格差の広がりや長すぎる労働時間などが原因だろうし、じゃあやっぱり個人の思考や行動ではなく社会構造が歪んでるなってところに帰結する。
タチの悪い差別者を批判することはもちろん重要だけど、違う選択をする人たちをひとまとめにして蔑んで対立を深めても、二度と戻ってこられなくなる人たちが増えて取り返しがつかなくなるだけじゃないだろうか。
壁を築かないために必要なのが対話と連帯で、これは比較的安全圏にいる社会的マジョリティとされる属性を多く持つ者(日本国籍、日本人、男性、健常者、異性愛者、シスジェンダー、都市部在住、大卒、ホワイトカラー、正規雇用、宗教的マジョリティ etc)に特に力を入れてほしいところなのだけど、悲しいかな自分の観測範囲では社会的マジョリティの人が切り捨てるような発言をしてる場面をよく見かける……