しずかなインターネット

日記やエッセイにちょうどいい
文章書き散らしサービス

ログイン

夢を語る

渦
·
公開:2026/8/27

わたしには夢がある。

それは、世界一役に立たないお悩み相談番組をポッドキャストで作ることだ。なぜポッドキャストなのかと問われれば、なんか流行ってるからとしか答えられなくてごめんなのだが、とにかくわたしは世界一くだらない、世界一役に立たないお悩み相談がしたい。

わたしはラジオが好きだ。家にいる時はだいたいラジオを聴いている。テレビだと情報量が多すぎて疲れるし、音楽は気分によって選ぶのが面倒。その点ラジオなら適度な情報に適度な音楽、しゃべり慣れたパーソナリティの話術が提供される、まさにTHIS IS サイコーにちょうどいいもんだ。なのだ。

さてこのラジオだが、わたしの敬愛する作家朝井リョウは自身のポッドキャスト番組内でこう言っていた。「ラジオのリスナー投稿は最終的にお悩み相談になる」

そうなんだよ〜さすがだよ朝井リョウ〜だいたいみんな悩みを相談するんだよ〜と、ストーブの前で体育座りしながら頷くわたし(2月に書いているので。寒い)。

この「最終的にお悩み相談」が、私はずっと疑問だった。もちろん今も疑問に思っている。

なぜ人は、人生の成功者である有名人に悩みを相談するのだろう。

ラジオのパーソナリティはだいたいが、それぞれが所属するジャンルにおいての成功者だ。作家、音楽家、俳優、タレント、研究者etc. メジャーどころの番組を担当する人ならまさに殿上人と言っても過言ではない(これも敬愛する作家朝井リョウが言っていた。彼は言葉選びがいちいちうまい)。

そんな殿上人に、何を相談するの?

自分の才能一本で頂点に登り詰めた人の、血反吐を吐きながら得た体験談からくる処世術が、本当に参考になると、思っているの?? 自分に応用できると、信じているの???

だとしたら自分自身を見直すところから始めた方がいい。

わたしがよく聴くラジオ番組には、リスナーのお悩み相談コーナーがある。これがとてつもなくおもしろい。回答者はj-waveきっての陽キャLiLiCo姐さんだ。このLiLiCo姐さんの回答が、見事までに殿上人視点でそれはもう最高なのだ。ど底辺から今のポジションまで、まさに自分の才能一本で登り詰めた猛者オブ猛者の彼女から生まれてくる回答は、まあ〜参考にならない。

「熊が頻繁に出没します。怖いです。どうしたらいいですか」「ライフルで眉間を撃って鍋にして食べればいいよ♡」みたいなノリなのだ。 熊が怖いって言ってんのに⁈ 狩猟免許も持ってないのに⁈ 対峙して撃って食えと⁈⁈

まずは自治体に連絡して猟友会に連絡を取って〜みたいな現実的な解決方法は、絵に描いたような強者であり成功者であるLiLiCo姐さんはくれない。LiLiCo姐さんはあくまでも自分の経験則から答えを導き出す。だから彼女の手にかかれば熊なんて一発で仕留められるし、捌けるし、なんなら美味しく調理だってできるのだ。

たまに有用な回答をもたらすこともある。が、LiLiCo姐さんのお悩み相談コーナーはいつもこんな感じ。一般人に寄り添わないウルトラCを捻り出すのがLiLiCoの姐御。だがいつだって彼女は真剣だ。真剣に相談者の悩みを解決しようと頭を働かせる。そしてパンチの効いた答えを出す。それがこのコーナーの醍醐味。だからこそおもしろい。今週も解決しなかったねぇとニヤニヤするのがわたしの楽しみになっている。

とまあこんな感じで、一生を平凡につまらな〜い感じで終えるわたしたちが、どんなにラジオパーソナリティに救いを求めても得られるものは何もない。我々と殿上人は歩む道も見える景色も何もかもが違うのだから。

だがしかし、今日もリスナーは悩みを送る。些細なことからわりと真剣にやばいやつまで、電波の海には多種多様なお悩みが浮かんでは沈む。

お悩み相談が人気なのはなぜか。それはおもしろいからだ。平凡に生きる一般人が抱く悩みを、魑魅魍魎が蠢く弱肉強食のエンタメ業界で名を馳せる猛者が、真剣に解決しようとするアンバランスさ。そしてどう考えても難易度MAXの解決策なのに、殿上人から与えられたというだけで自分にも無敵のパワーが宿ると信じる相談者の無垢さ。そしてこれって相談者に問題があるんじゃない? と我々に思わせる絶妙な内容。この三つの相互作用で生じる滑稽さがおもしろいのだ。

ここでわたしの夢についての話に戻そう。冒頭わたしは、世界一くだらなくて世界一役に立たないお悩み相談がしたいと言った。

ラジオのお悩み相談が人気なのは、超一流の有名人に、曝け出した自分の恥部を憐れまれ共感してもらい、おまけに親身になってもらえるからだ。一瞬でも自分が回答者と同じ階層の人間になれたと錯覚できる。こんなに快感なことはない。聴いている側も、手のひらで踊らされる相談者の愚かで哀れな様を高みから見物できる。こんなに快感なことはない。

だが同じことをわたしがやっても一ミリもおもしろくない。ただの一般人がただの一般人の悩みを聞いて真剣に答えてどうする。そんなのは悩みが発生した時点で近しい人の間で行われているはずだ。

じゃあ何をするか。

ここで再びわたしの言葉を思い出してほしい。

「世界一役に立たないお悩み相談」だ。

わたしの番組(予定)では、まず予期せぬ出来事で人生どん詰まり的な人の正当な悩みは無視だ。そんなのは公的機関や専門家に頼ってほしい。わたしが求めるのは、愚かとしか言いようのない行動から発生した、愚かとしか言いようのない問題だ。選りすぐりの愚か者ストーリーを、愚かだねぇ〜と笑いながら、まったく役に立たない話をする機会が欲しい。

何を隠そうわたしは愚痴が大好きだ。

愚痴というのは悩みと違い、解決策を必要としない。そして自分が少し見方や行動を変えればあっという間に消滅するような内容がほとんどだ。それを真剣にぐちぐち言う人が、わたしは好ましい。

愚痴というのは己の内側に渦巻くどろどろした感情を吐き出したもので、愚痴を吐く人はそもそも何の救いも求めていない。ただ聞いてほしい、肯定してほしい、よしよししてほしい、それだけなのだ。アドバイスなんてされた日には、伝家の宝刀「でもでもだって」を抜き相手に斬りかかる。その貪欲なまでに肯定と容認を求める姿勢がとても好きだ。真剣に滑稽な様子を見せてくれる彼女たち(わたしの周りには女子しかいないのです)を愛らしいとすら思う。

とどのつまり、わたしは滑稽な展開を求めている。他人がどうでもいいことでぐちぐちする滑稽な姿を、安全な場所から、この目で見たいのだ。

それならラジオのお悩み相談と同じじゃないか。いや違う。まったくもって違う。公式なお悩み相談との唯一にして最大の相違点は、わたしは真剣に答えを出そうとはしない、というところだ。何度も言うけど、一般人が真剣に頑張ったところでおもしろくないから。

ということで、わたしはくだらない愚痴を集め、散々よしよしして、くだらない回答をしたい。この場合、回答しても意味がないので不幸をありがとう! と盛大な拍手でお見送りするほうがいいな。

とにかくわたしは、人の数ほどある秘密と不幸を覗き見したい! 他人の不幸について語りたい! 未知の世界を探求したい! 多種多様な愚痴を聴きたい!

そんな願望を叶えてくれるお悩み相談コーナー「あたしの知らない世界」、ポッドキャストで近日公開です。

@uzu_uzu
エッセイ書いてます。いかにくだらなく、いかにアホな内容を提供できるかをまじめに考えています。 ごくたまに創作もするよ。