野矢茂樹『哲学な日々』を読んだ。野矢といえばなんといっても『論理トレーニング101題』が有名で「明晰な論理の人」というイメージが強かったけれど、この本は日常生活を綴ったエッセイで、良い意味で力の抜けたゆるい文章もあって意外だった。東大の哲学教授だけどやってることは坐禅の講義だったりするし。
文中では「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」を本来の意味とは違う言葉として認識していた話があって、あ、自分もそうだ、と思った。溺れそうになったら、あえて力を抜いて身を捨ててみれば自然と体は浮いてくるものだ、とそういう言葉だと思っていたのだけれど、日本語大辞典には「一身を捨ててかかって、はじめて成功するものだ」とあるらしい。捨て身でがんばれという意味だ。全然違うじゃん。