06月05日(金)

veck
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公開:2026/6/5

ベランダに置いていたちょい干し用の物干し台がついに往生した。

屋外に出しっぱなしなので、棚用のワイヤーが刺さっている穴から腐食が広がり、先日の台風の時に畳んで置こうと力を入れた瞬間大破。どうにもならなくなってしまった。

そういえばこんなのいつ買ったんだっけ?と思ったら、もう15年以上前、半年ほど一人暮らしをしていた時の洗濯物干しとしてホームセンターで適当に購入したものだった。

当時新卒で、やりたいことも自分がなにに向いているのかも全くわからないまま就活をしていた私大文系の私にリーマンショックの風は冷たく、普通に100社落ちした後、バイト仲間の女の子のツテで紹介された小さな不動産屋で働きはじめた頃だった。

大学卒業を控えた寒い3月、東関東大震災が起こった。既にその不動産屋でアルバイトをしながら不動産の世界のことを勉強していた時で、受付のPCの前に座ったまま向かいのビルがカマボコみたいに揺れていたことを覚えている。

日本中が未曾有の大混乱だけれど、自分の住むエリアはインフラの復活も早かったので、非日常の中で必死に日常をやろうとしている、そんな日々だった。

こんなときには普通、普段意識していない家族の存在が支えになったりありがたみを感じたりするもので、実際自分の周りにもそういう声が溢れていたが、私の母は大層クセの強い人で、非常時のテンションでその厄介さが日々暴走しており、毎日慣れない仕事に必死になっている私にそれを受け止めるキャパは残っていなかった。これ以上一緒に生活をするのは不可能だと思い、家賃42000円の会社の管理物件に逃げるように引越した。社用車を往復させて荷物を運び、余震で緊急地震速報のアラームが店全体に鳴り響く中、ホームセンターで生活に必要なものを買った。そのひとつがこの物干し台だった。

初めての一人暮らしで、実家で家族全員の洗濯物を日々洗っていたため、自分一人分の洗濯物の少なさに驚いた。洗濯カゴがいっぱいになったら洗おうと思ったのに、いつまでたっても満杯にならない。一人分の生活ってこんなに小さいのか、と呆然とした。家事の少なさが正直おままごとのように思え生活している実感がひどく薄かったが、電気やガスの料金を払って一ヶ月が回ったときに「できたんだ」と思った。ちょっといわく付きの部屋だったせいか、軽い心霊現象みたいなのも起こったりしてたけど……

思えばあのとき部屋で使っていたものはもうほとんど処分してしまって何も残っていない。この物干し台はあの生活があったことの唯一の証人のようなものだった。

なんとなく感慨深いが、新しいものを買ったら私は容赦なく切ってゴミに出すのだと思う。