以前、とても大切に書いてくれたんだろうな、というお手紙をもらったなかで
なにがつらいのかもよくわからないくらいつらかったときに、おかげさまで安心できて、今日も行って帰って来られました というようなことが書いてあって、そういうことを見越して用意したものでは当然になかったけれど、巡り巡ってその人のその時にそういうものとして在ったことは、得難く有り難いことだなあとぼんやりしつつもしっかりした感覚をこちらこそもらったのだけれど、それに近いことを自分が肌で感じていて、あの時のあの名前も知らない誰かが遠くて手を振っているような気持ちになっている
そう手を振っている姿に接したからかもしれない
坂の上で見送る姿、まだ手を振っていた、喪われているもの、まだ喪われていないもの、これから確実に喪うもの
もうない、まだある
もうなくなる、でもまだなくなっていない