『PERFECT DAYS』

くろこだ
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※ネタバレありの感想

『PERFECT DAYS』見てきた。映画館で流れていた予告だったり、役所広司さんがあさイチにこの映画の宣伝で出ているのを見て、それからずっと気になっていた。

良かった。見て良かった。すごく良い映画だった。この映画を見る前、すごく心がざわざわしている感じがしていたけど、『PERFECT DAYS』を見たおかげで落ち着いた。私も平山さんみたいに生きたいよ。

スカイツリーが近くに見える、風呂無しの古いアパートに住むトイレ清掃員の平山の日常。彼の朝の目覚めから眠りにつくまでの1日のルーティンがとても美しい。髭を整えてるところ、玄関に並べられた外出時の持ち物は持ち出す順に置かれているところ、アパート前の自販機で必ず缶コーヒーを買うところ、その缶コーヒーがBOSSなところ、車のオーディオはカセットテープなところ、トイレ掃除の手際が良いところ、掃除用具を使いやすいように自作しているところ、自作したであろう掃除用具の手鏡を使って便器のフチ裏の汚れまでチェックするところ、仕事終わりにご機嫌で銭湯に行くところ、行きつけの飲み屋の店主が「おかえり!」って出迎えてくれて「お疲れさんっ」て注文せずとも品を提供してくれるところ、気になった本を購入するときに本屋の店主が一言その本のおすすめを教えてくれるところ、写真を現像しに行くと姿を見ただけで前回頼んでたものを差し出してくれるところ、モノクロの夢を見るところ、植物のお世話をするところ、お昼休憩に木漏れ日の写真を撮るところ、その写真をコレクションしてるところ、いい大人同士で影踏みを楽しんでいるところ、、、特に好きなシーンの羅列。

感情の起伏が少なそうな穏やかな平山も、イレギュラーなことが起こるとルーティンが崩れる様が人間らしくてものすごく良かった。好き。

穏やかな波のように落ち着いた平山に不安定な人たちが磁石みたいに次々と吸い寄せられるところ、めちゃめちゃ分かる〜〜。でも若い女性とワンナイトラブみたいな展開じゃなくて、同世代の女性が気になっていて失恋(まだ希望はありそう)してたのは安心した…。ちょっとコミカルな流れになりそうなところは、同じ様なテンションで見れる『すべて忘れてしまうから』を思い出した。脳内でCharaさんのナレーションが入りそうになった。

迷子の子供や姪っ子に好かれてるのもいい。家出するなら叔父さんのところって決めてたから。って姪っ子の台詞はドキッとした。離れてしまっても信頼されている平山の叔父さんスゴイ。叔父と姪の同居生活は、平山のそれまでのルーティンに姪っ子が入り込んで新鮮な空気が流れていく様子がキラキラしてた。眩しい。

平山はたぶん実家が太くてそのまま進んでいけばエリートだったみたいだけど、自らエリートコースを外れたのかな?姪っ子も少し窮屈な思いを抱いているのかも。詳細は明かされないまま終わる。余白がたくさんあるから色んな想像できて楽しい。

出てくる東京のトイレ、オシャレだったな。平山の車内のプレイリストも全部オシャレだったな。ほとんど洋楽だった。清志郎さんが好きって言ってたオーティス・レディングの曲しか分からなかったけど。

毎日同じことの繰り返しに思えても、全く同じ日なんてない。少しずつ変わる世界や景色に気付ける人になりたいよ。