『イシナガキクエを探しています』という番組について。第一回の所感など。乱文。
55年前(1969年秋ごろ)に行方不明になった女性を探している、という体で進むフェイク・ドキュメンタリー番組。
『フェイクドキュメンタリーQ』がスケールアップしてやってきた感。第一回ではイシナガキクエを『生涯を費やし』探している男性、米原実次(ヨネハラサネツグ)を中心に話が展開する。てっきり一回限りの特別番組だと思っていたから、番組後半になっても淡々と進行していてちょっと焦った。来週もあるということで嬉しすぎる。
さて。
違和感しかないままふわふわとした情報だけを与えられて番組は進む。何故イシナガキクエは姿を消したのか、何故米原実次は彼女を執拗に探しているのか。第一回では何も明かされない。二人の関係性すらわからないのだ。一応、「家族みたいなものかな」とは言っているが……
イシナガキクエについて。生年月日が昭和22年(西暦1947年)ということは、失踪当時22歳。現在は(生きていれば)77歳である。(米原は今年84歳)
近隣住民からは女性の存在は妄想扱いされ、番組スタッフの調査でもイシナガキクエなる人物は『存在自体が疑わしい』と指摘される。
この指摘をされた時、米原の「──で?」の間が不気味。しかもちょっと涙目。
「本気で探してくれてるんでしょうね、ずーっと」「だって長いんだもんね」という言葉からは番組スタッフと米原の関係がそれなりの年月を経てきたものを伺わせる。
そのやり取りの後に、「キクエ」とスタッフに写真を渡す時はえらいぶっきらぼう。以前は写真はないよと言っていたのに。しかもその2週間後に米原は亡くなってしまうのだが……
番組は情報を視聴者に求めだし、寄せられた電話を元に番組は展開していく。色々あるのだけれど、カメラのよくわからない動きや元刑事の神崎を煽るような安東の発言が不穏さを表す。
極めつけは来週の放送時間が安東の発言とテロップが異なること。
発言は「来週5月10日、25時33分、深夜1時33分からです」
テロップは「5月10日 よる1時53分」
何を信じるかはあなた次第です、ということだろうか。
ここからは完全な戯言。番組が進んで間違ってたらハズカシ。まあ第一回だけでは何もわからないよね、と言い訳をしつつ。
おそらく構成としては複数の軸がある。
米原が探していたイシナガキクエについて
捜索番組という体でキャストを指弾する何らかの思惑
(1に関連して)視聴者に架空のイシナガキクエを増殖させる
1についてはモノホンの怪異と人間の悪意との相乗効果による結果なのかなという感じ。イシナガキクエを知ったうえで忘れちゃったら呪われちゃうのかな、なんて。リメンバー・ミー。永遠に。
2はベタすぎるかもしれないけれど、やはりスタッフが一度存在を否定したイシナガキクエのために特別番組を仕立てた理由がよくわからない。何らかの悪意があるんじゃないかなあと思い込みたいところ。
3は1に書いたようにイシナガキクエを忘れたら……というわけで視聴者の皆さん、頑張ってください、ということになるんじゃなかろうか。映像の中にはたくさんミスリードがばらまかれていて、視聴者はそのうちの好きなものを拾って自分のイシナガキクエを作り上げていく、みたいな。ガチホラーも並行世界も全然いけそうだしね。
——「イシナガキクエを探しています」の見どころは?
大森:ネタバレになるので難しいのですが…僕は感覚的に見ていただいて面白いものになったと思っています。
寺内:そうですね。最終的にそっちに寄っていった気がします。なんか考察よりも感覚の方を優先していく運びというか。
新たなJホラー、「フェイクドキュメンタリー」はなぜ人気?|フォーブス ジャパン ( https://forbesjapan.com/articles/detail/70629/page3 )
ごちゃごちゃ書いてきたけれど、上記の引用の言葉からわたしは「怖い目にあわせてやるぞ」というメッセージを勝手に受け取っており、ハラハラしながら楽しみに次回も楽しみに待っているのであった。ああ怖い。
04/30追記
ふと、イシナガキクエはいないことにしておかないとダメなものなんじゃないかなと思った。
米原はいないことを自分に言い聞かせるように探していた、みたいな。