昨夜は両親不在につき一人で夜ご飯を用意した。中辛のカレー。といっても母上が野菜を切るなどの作業は終わらせてくれていたので、私がしたのは鍋をぐつぐつさせてからルーを投入することくらいだ。ルー。ルーって何だっけ。調べてみたところ「バターと小麦粉をゆっくり炒めたもの」らしい。よくわからない。たぶん誰もわかっていないんだと思う。
私はカレーは普通に好きなのだけど、わざわざ外食でカレーを頼むことはまずないな…くらいの程度の愛着でもある。もちろん世の中にカレー屋さんというものが存在するのは知っているけれど、チェーン店でカレーを食べるお金があったらラーメン屋さんに行きたいし、スパイスからこだわったカレー屋さんみたいなところにはどうも足が向かない。そもそも辛いものがどちらかというと苦手なのだ。近所のスープカレーの名店のメニューに書いてあった「お子様でも食べられる辛さです!」という表記に騙されて以来、私はあの手の飲食店を何一つ信頼していない。
海上自衛隊の艦艇では毎週金曜日にカレーが提供される。よく「航海中に曜日の感覚を失わないため」という由縁が説明されるけれど、本当の理由はよくわからないらしい。思い返すと、私が通っていた小中学校の給食でもカレーは確か決まって金曜日に提供されていた。こちらはたぶん、洗い物の都合なんだと思う。例えば1週間の途中に提供するとなると、普通のお皿を一旦しまって、カレー皿を出して洗って片付けて、また普通のお皿を出す…なんていう運用をすることになってしまうから。
海上自衛隊に限らず戦前の旧帝国海軍でもカレーはよく提供されていたそうだけど、聞くところによればルーツはイギリス海軍らしい。言われてみればインドはかつての大英帝国の要だ。カレーはインドで生まれ、イギリスに到達し、また東の果ての日本にまで辿り着いた。考えてみればインド生まれの仏教は東洋を席巻したし、現代ではグローバル企業の中枢を印僑が占めているケースが増えつつあるようだ。広がる国、インド?ところで、「人間がカレーを作っているのではなく、カレーが人間を利用して世界中で繁栄している」という俗説を聞いたことがあるが、これに説得的に反証する能力をあなたは持ち合わせていますか?
インドという国については遺憾ながらあまり詳しくなくて、国際政治だとだいぶ好き勝手なプレイングをしているな~くらいの印象しかない。そういえば中学の時に仲の良かったひとが大学のゼミか何かで長めにインドに行っていた。どうだった?と聞いてみたい気がするのだけど、突然メッセージを送ったら迷惑じゃないか、とか、とはいえたぶん歓迎される可能性が高いのだろうけど、とか、まぁでも仮に迷惑に思われたとしても私の人生との関わりがもうほとんどない人ではあるし気にしなくてもよいのかな、とか、ではもし今後一切かかわらないであろう人に対して失礼な行為を取るのは認められるのか、とか考えていたら何もできないまま1ヶ月が経とうとしている。人生ゲームって難しい!あとあまり関係ないのだけど、「インドに行ったら新たな自分に出会えるかも!と思って旅に出たが、なんにもかわることのない私のまま帰ってきて絶望した」みたいな話を聞いたことがある。それはそうかもしれない。
何の話だったっけ、そうそうカレーとか言う謎のメニューについて。林間学校の類のイベントの夜ご飯は大体みんなでカレーを作って食べていた。幸福な思い出。こういう時にカレーが選ばれるのは、こどもたちでも比較的作りやすいから、とか、一皿で食事が完結するから、とかそういう理由なのだろう。しかし、それに加えて重大な、極めて直観に反する事実を指摘せねばならない。カレーを嫌いな人ってほとんどいないのだ。
意味がわからない。いや、カレーは美味しいとは思うのだけど、あれは「スパイスを煮詰めた「ルー」とやらをご飯にかけて食べる」料理である。改めて考えればだいぶ意味不明な料理だ。しかもカレーの美味しさの最大のセールスポイントは「辛い」こと。味覚ですらない。痛覚だ。曲がりなりにも「だしの美味しさ」なんかの美に長年傾倒してきたこの国で、何故このカレーとやらがこんなにも流行りえるのだろう。
では学校行事でカレーが採用されるのは「嫌いな人が少ないから」(カレーが嫌いだという人を私は一人しか見たことがない)、即ち最大公約数としてのコモン・カレーなのかというとおそらくそうではなくて、小学生に好きな料理のアンケートを取ったらカレーはだいぶ上位に来るはず。寿司とかラーメンならまだわかる。何故カレー?どうしてここまで市民権を得ているのだ。美味しいのはわかるけど。
もしかすると私は、カレーの美味しさをわかるのは自分を含め選ばれし少数の者だけだ(というか、大衆にはカレーの美味しさなどわかるまい)と思っているのだろうか?とっても痛いファン。カレーのだけど。これは推している若手バンドのいちばん素敵な曲が「TikTokの曲」とみなされたときの気分だろうか。いや、でも私はたぶんそこまでカレーに傾倒してはいない。少なくとも、将来「突然、スパイスからカレーを作ることにハマる人」にはならないと思うのだ。どちらかというと「自炊を諦めて近所のカレーチェーンに通い詰める人」とかの方がまだ可能性が高いと思う。どちらが家族に迷惑をかけているといえるかは考えたくない。
ちなみに、今PCに「かぞく」と入力してスペースキーを押したら「華族」と変換された。私のことを何だと思っているのだろう。ファミリーレストランに一人で入店すること、及び孤独死のリスクをゆるやかに恐れ始めている。ファミリー・レス。
とはいえ何よりありがたいことに実家には家族がいて、今日は父上が帰ってきている。今夜も私はまたカレーの鍋をぐつぐつする。気が向いたらまた文章を書いて、それから本をいくつか読みたいな。明日が良い1日でありますように。