この動画が素晴らしかったから、デザイナー水野学のワークブックを読み直してみた。動画と合わせて、その雑メモ。
水野さんは"センスは知識からはじまる"という書籍で知っている人も多いと思う。(僕は読んだことがない...笑)
動画のエッセンスもまさにこの本のタイトルの通り、
動画では、①考えること ②カタチにすること この両方ができる人、か、両方の人を橋渡しができる人が求められているという話があり、 じゃあ僕らはどうすればいいのか それは、
反対側の知識を求めることが大事だと説明されています。
これはこれで勉強になるのだけれど、僕は事例として挙げられていた相鉄線のデザインブランドアッププロジェクトの話しがすごく好きだったから書き残す。
地元が東横沿線、職場も渋谷だから、相鉄線自体に乗る機会も多く、こういう知っている事例→体験した事例に変えることができるというのは貴重だからだ。
知識を増やすことで、世界を観る目が豊になり、日常の思考量を増やすことができる
実際に乗ってみて分かったことがたくさんある。
例えば、吊り革のフックが広く持ちやすいデザインになっていること、人が立つエリアが広く多少混雑していても居心地が良いこと。
リデザインの概要についてはこのサイトに綺麗にまとまっている。
動画とワークブックのメモに移る。
まず相鉄線のビフォーアフター。
ネイビーの方がアフター。
ただビフォーの方も2007年に統一された新しいデザインで、それから10年弱経って、今回の水野さんのプロジェクトで2016年春にネイビー1色へ統一された。
10年でリブランディングって、かなり早い気がする。
創立100周年というキッカケがあるとは思うけど、1番は2019年の東横線への乗り入れかな。この乗り入れで、都内で海老名行きのこの車両を見ることになった。渋谷で海老名行きのネイビーの電車を見た時は流石に驚いた。この電車、海老名まで行くんだ、寝過ごしたら終わる。。。。
だからこそ、東京でも横浜らしさを感じるデザイン、というのはすごく重要だったんだろうね
さて、この特徴的なネイビー1色はどのように決めていったのか。
横浜の色としてネイビーブルーを使いたいというのは決まっていたけど、当時電車の車両を1色のみで塗装することは、何かしらの問題があり、できないだろうと思っていたらしい。
でもモノは試しということで、それを1色に塗ることってできないんですか?と聞いてみたところ、「できますよ!」と返ってきて、驚いたんだと。しかも維持管理の面でも1色塗装の方が都合が良いんだと。
このように、子供のように無邪気に聞いてみると、できないことが意外にできてしまったりすることが多いらしい。
このネイビーブルーも、ネイビーブルーは200色あんねんということで、トーンを決めるために廃車車両に色を塗って比較して決めたそうだ。
これも最初はすごく小さなカラーサンプルから、もっとサンプルを大きくできませんか?という無邪気な質問を繰り返した結果らしい、ちょっと怖い笑
車内のLED照明について
新しい相鉄線車両はなんと時間帯によって照明の色が変わるようにデザインされているんだけど、これも無邪気に「照明の色ってLEDで変えられませんか?」と聞いてみたら、できてしまったらしい。確かに照明の色が変わる電車とか聞いたことがない。
先入観をなくす、分からないことは聞く。これってすごく大事なんだなあ。
次に駅舎のデザインについて。
ビフォーアフターがこちら。
アフターの方のデザイン、すごくシンプルだなって感じた。
これには、機能的な意味があって、汚れが最も目立たず、キーマテテリアルのレンガや、駅で重要な案内サインなどの情報を目立たせる役割がある。
水野さん曰く、
デザインを好みでやると決まらない。
金言だと思う。
しかも、駅の汚れを実際に採取して、最も汚れが目立たない色にしたらしい。
水野さんくらいの一流になると、閃きと知識でいい感じのデザインが出来上がりそうなものだけど、
どのデザインも、
調査→仮説→チームで実験・検証→ディスカッションという流れを通して決めている。
キーマテリアルって何?って思ったんだけど、ヨーロッパの歴史的な駅を巡回した海外視察で、鉄・レンガ・ガラスが象徴的に使われた駅空間を体感したことが、大きなヒントになる、決めたそう。
しかもこれだけじゃない。このレンガの色もサンプルを持ち歩いて、ニューヨークの街に当てたり、ディズニーランドの建物に当てたりしながら決めたそう。
僕に水野さんと同じ能力があったとしても。ここまでこだわれる自信がない。。。
逆に、能力はなくても、"こだわる"ということは真似ができる。
最後にベンチのデザイン
ここに書いてある通りなんだけど、気づきがすごい。
駅のベンチは隣を一席分空けて座る人が多いから、1人あたりのスペースを広く設定したそう。隣を気にせず1人でゆったり座ったり、親子で一緒に座れるベンチにデザインにしたそう。
この域になってくると、デザインで泣ける。(ガチ笑)
確かに1席分空けて座るわ...でもそれをデザイン上の課題として考えたことはなかった。
これもあれだ、
デザインを好みでやると決まらない。
最後っていうのは嘘でした。
これが本当に最後、ホームドアのデザイン。
まずホームドアって既製品じゃないんか...っていう。
このホームドアも実物を群馬県まで、皆んなで見に行って決めたそうだ。
こだわりは上部の角度だそうだ。
ホームドアの上部は飲み物を置けないように斜めになっているんだけど、この角度をどうするかということも目で見て決めたんだと思う。
デザイナーにとっては当たり前なのだろうけど、すごいこだわり。
ワークブックには、水野さん、牧野さん(DE Inc.)、辻さん(arca)、栗林さん(CHOCOLATE Inc.)の対談がある。
牧野さん、辻さんは会ったことがあるし、栗林さんではないけれどチョコレートのプランナーとは意見を交わしたことがあるけど、皆さん思考が深くて、意志が強い。
だから何かある訳でもないけど、縁がある人たちが載っていたから不思議な感じがした。