恋と愛

ちさと
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先月、山田詠美の「A2Z」を読みました。

簡単に説明すると、出版社に勤める主人公は夫(同業者)に彼女がいることを打ち明けられショックを受けるけど、主人公にも恋人ができて……というW不倫のお話。深キョン主演でネットドラマ化されているようですが終始CV永島由子で再生して読んでしまったのは、私がミドサーの恋愛を考える時、SATCに引っ張られるからでしょう(笑)不倫ものはあまり進んで読まないのですが、このお話は深刻ぶらずにドライに描かれていて読みやすかったです。

主人公も夫も恋人に対しては、恋をしたことのある人なら誰もが経験する猛烈な感情にとらわれています。そして、誰もが必ず失っていく感情。

突然自慢ですが、私は結婚7年目になる夫ととても仲がいいです。でも、寝ても醒めてもその人のことを考えるような、頭の回路が全てその人に繋がってしまうような感情はいつの間にかゆっくり失っていったと思います。私は不倫の経験は断じてありませんが(笑)終わったはずのものをやり直せる不倫がどれほど刺激的かというのは想像に難くありません。

ただ、主人公も夫もそこまで夢中になれる相手を選んで離婚する選択肢がないのは、この夫婦が構築してきたものの唯一無二性に恋人が決して敵わないからです。「あの時、会いたい一番は彼女だったけど、失いたくないのはいつもお前だった」という、恋と愛を端的に表した台詞があるのですが、その人の世界の中心にいることと、土台になることは、同じようで全然違うんですよね。

だから、自分は夢小説を書く時に、この二人が恋愛のどのフェーズにいるのかなというのは自然と考えていますね。恋が必ず終わるものだと知っているからです(夢書きが夢のないことを……)。とらわれる恋から穏やかな愛へと移り変わった先で幸せに暮らしている二人が理想です。

解説で江國香織が「正しい子供みたいな野蛮さと真摯さで、大人たちの関係を解剖する小説」と評していました。

私は主人公とは全然違うタイプの女なのに、主人公の恋の一生には覚えがあり過ぎます。多分みんなそう。どんな人間もメスで開けば血と肉と骨が等しくあるのと同じで、恋愛の中身なんてその実、どれも同じようなものなんですよね。

@wcat122
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