暮しの手帖で読んだ納豆肉みそを作ってから、上海蟹を食べる会があったので副都心線で元町中華街まで行った。路線の変化による乗客の雰囲気の違いをいちばん感じるのは田園都市線だけどここも独特の雰囲気がある。
観光地の名前を冠している駅は別にそのど真ん中に位置してるわけではないし、地下鉄の出入り口は街中に突然開いていることが多い。階段を登って見知らぬ街の暗くて寒い夜に出たりするとなんとなく放り出されたような気持ちになったりする。元町中華街もまさにそれで、吹く風が冷たいと思いながら現在地の字が見つからないくらい情報量が多い案内看板をしばらく眺めて、結局Googleマップを開けた。
著名なおいしいものの一つと聞く上海蟹を経験してみたかった。海鮮のコク・深みが苦手なパートナーを誘わずに単身で参加した会は1人客も割合に多かった。黙々と蟹を剥いて、蟹が入った料理を延々食べた。肉が甘くてミソが濃い、それから香りがある、という感じ。対面に座る美食家の佇まいの女性が、あんかけのかかったお皿に他のお客さんがレンゲを求める中で唯一金属のスプーンを求めていて、常々レンゲが最後のひと掬いに向いていないと不満を覚えていた自分の蒙が啓けた気になったので真似をして頼んだりした。デザートをいれて10皿。最後の料理はほの温かい甘いスープにうずらの卵が入っていた。丸いものは縁起がいいらしい。味はうずらの卵。
帰り際になんとなく会話をしていた面々で連絡先の交換をしようとなった際、若い2人づれが交換せずにふと離れて行ったのを(そういうこともあるよね)と眺めて、自分も会計して散会した先の駅の地下道で連絡先を交換した人と行き合いそうになって、気を遣わせるのに引け目を覚えてすこし躊躇してからそ知らぬふりをしてしまった。
元町中華街から横浜まではみなとみらい線という名前らしいのを出入り口で知る。帰りの電車もやはり雰囲気が違って、そこでやっと乗客がみんな若いんだなと気づいた。