はじめに
「ザ・ゴール」シリーズは、以下に紹介されているように、結構な数があります。小説版もあればコミック版もあります。
今回は、このシリーズの中から以下の書籍を読みました。すべて小説版です。
ザ・ゴール
ザ・ゴール2 思考プロセス
チェンジ・ザ・ルール!
クリティカルチェーン
ザ・チョイス
また、以下のチャンネルにアップロードされている「ザ・ゴール」関連の動画も少しずつ見ていっているところです。書籍の復習にもとても良いですね。
他にも以下の動画も無料で視聴できるとのことで、こちらも見ようと思っています。これこそ、復習にもってこいですね。
あとこのあたりも読んでいきたいなーと思っているところです。他にもおすすめあれば教えてください。
この記事では、「ザ・ゴール」シリーズの書籍の内容を振り返っていこうと思います。動画については書籍の補足的な立ち位置かなと感じたので、試しに見てみるのも良し、書籍を読んで復習で見るのも良し(自分はこっち)かなと思います。
ザ・ゴール
最初に手に取ったのはこちらです。 突然の工場閉鎖の危機に直面した工場長アレックス・ロゴが工場を再建していく物語です。在庫の山と納期遅れに苦しむ彼は、恩師のジョナから「TOC(制約条件の理論)」のヒントを与えられます。この工場が再建していく様子を通じて、TOCの基礎を学べます。謎解きのような小説としての面白さもあり、スイスイ読めました。
TOCは、個別の工程の生産性や品質の改善ツールではなく、システム改善のツールです。企業や工場を1つのシステムとみなし、そのシステムの目的を達成するための改善手法です。企業の目的が「金を儲け続けること」だと定義すれば、そのためにはスループットを増やすか、在庫を減らすか、経費を減らすしかないと博士は説いています。そして、スループットを増やすことが最も重要であり、次が在庫を減らすこと、最後に経費を減らすこととしています。
工場全体のアウトプットを上げるには、ボトルネックのアウトプットを最大化しなければいけません。そこに集中する必要があります。そして、逆に非ボトルネックは、ボトルネック以上にアウトプットを出してはいけません。それは部分最適であり、不要な在庫を生み出します。
というように、部分最適から脱却し全体最適な視野を持ちつつ制約を徹底活用することで、工場のスループットを最大化させていくのです。他にも、継続的改善のための5つのステップ、スループット会計という新たなコストについての考え方、在庫を減らすならバッファーをどう管理するのか?であったりとまだまだ重要な要素はありますが、この先は書籍をどうぞ。
そして、書籍を読みながら、自分の普段の仕事にどう活用するかを考えていました。私はよく「重要なタスクにフォーカスしてリードタイムを短くしよう」などと言います。しかし、その理由を利益に繋げる形で論理的に説明することはできませんでした。ところが、TOCの理論を用いればそれが可能になります。ザ・ゴールでは、舞台は工場なので物理的なモノづくりですが、この理論自体はソフトウェアにも適用できます。というより、TOCは「つながり」と「ばらつき」があるものであれば、何にでも適用できると定義されています。
この時点で、既にTOCに興味津々になっていたので、そのまま迷うことなく「ザ・ゴール2」を読み始めました。
ザ・ゴール2 思考プロセス
ザ・ゴール2は、前作の主人公アレックス・ロゴが副社長に出世したところから始まります。会社の業績不振を理由に、彼は自身が統括する3つの事業グループの売却を突然通告されてしまいます。アレックスは、事業売却を防ぐため、数ヶ月で各社の業績を画期的に上げるという難題に挑みます。TOCの生産改善手法と「思考プロセス」を活用し、製品の売り方やサービスを変えてシェアを急拡大させ、危機を乗り越えていく物語です。
ザ・ゴール2を読むことで、TOCがただの生産改善ツールではなく、マーケティングや経営戦略へとTOCが応用できることを実感できます。制約が工場の外にあることは珍しくありません。これはソフトウェアの世界においても同じだと思います。そういった状況でも、TOCの思考プロセスを活用すれば、短期間で大きく改善することが可能なのです。市場のボトルネックを解消できなければ、利益向上のための経費削減という大義名分の元に、生産性を改善した工場の人員が削減されてしまうためです。
ザ・ゴール2で特に私が好きなシーンがあります。それは、アレックスがM&Aで得た莫大な資金をどう使うべきかを取締役たちに熱弁するシーンです。ここでアレックスは、誰もがコンフリクトすると考えてしまう「株主の利益」「従業員の安心」「市場の満足」のすべてを必要条件であり、同時に満たせると言い切ります。従来の考え方では「株主の利益(コスト削減)のためなら、従業員の安全(雇用)や市場の満足を多少犠牲にするのは仕方ない」といったように考えられがちです。そうではなく、全体最適で考えれば、すべてを同時に満たすことが可能だと言います。
具体的には「確固たる競争優位性を築く」「セグメントを独占しない」「連動しない複数のセグメントに参入する」の3つが必要だと述べています。ここでいう競争優位性は、ただ機能が優れているなどといったことではなく、他者が真似できない顧客の根本的な問題を解決できる「マフィア・オファー」を提示できることです。そして、市場がどうなるかは我々には見通すことはできません。そのため、市場をセグメントし、常に別のセグメントに乗り換えるためのバッファを確保します。そしてさらに連動しないセグメントに参入します。
この戦略により、もし1つの市場の需要が悪化しても、複数の仕事に対応できる柔軟な従業員を、すぐに別の儲かっている市場へシフトさせることが可能になります。結果として、市場の変動に振り回されることなく、会社は高い利益を出し続け(株主の利益)、従業員をレイオフする必要がなくなり(従業員の安心)、顧客の悩みも解決し続ける(市場の満足)ことができる、というのがアレックスの導き出した真の未来予想図でした。
ザ・ゴール2で登場する思考プロセスは「変化を起こし、実行に移すための手法」と解説されています。TOCにおける重要な問いである「何を変えればよいか」「何に変えればよいか」「どうやって変えればよいか」、この3つの質問に答えるためのツールになります。思考プロセスの詳細は長くなるのでぜひ書籍を読んで学んで欲しいです。この思考プロセスは習得するのは難しいですが、汎用性が高く強力な武器になりそうなので、ぜひとも身につけたいと思いました。
ここまで読んだタイミングで、ドラクエ40周年記念を迎えたのですが、残念ながら天空シリーズのリメイクが発表されなかったので、天空シリーズをスマホでやるという重要かつ緊急なタスクが差し込まれ、一時休憩を挟むことになります(?)
チェンジ・ザ・ルール!
次に読んだのは「チェンジ・ザ・ルール!」です。こちらは、ERPなどの最新テクノロジーの真の価値と、それを阻害する「古いルール」の打破を描いた物語です。テクノロジーで情報の限界が解消されても、現場が部分最適の古いルールに従い続ける限り成果は出ません。システムを提供する側が「テクノロジー」ではなく「バリュー(利益)」を売る組織へと転換し、顧客の誤ったルールを壊して全体最適の評価指標(IDDやTDD)を導入することで、圧倒的な競争優位性を築いていく変革のプロセスが描かれています。
「チェンジ・ザ・ルール」は、普段の仕事内容と最も近いため、共感する部分がかなり多かったです。特にERPを導入する企業のCEOであるグレイグから「それで利益はどれだけ増えるんだ?」という問いを投げられるシーンは、自分もこの問いに答えられなければいけないなと、改めて感じました。
TOCでは、部分最適ではなく全体最適の重要性を説いていますが、部分最適にならざるを得ないという現実があることも認めています。しかし、テクノロジーの進化によって、部分最適から脱却するタイミングが必ずきます。そこで「ルール」や「ポリシー」を変えることこそが、重要なポイントとなります。これは、TOCの「何を変えればよいか」「何に変えればよいか」「どうやって変えればよいか」という問いに繋がります。テクノロジーの進化に伴って、ルールを変えるべきなのです。
TOCを用いて、顧客の利益を最大化するための改善を進められれば、システムに不要な機能を追加する必要はなくなります。利益の増加に繋がらない古いルールに従うために、システムに機能を追加する必要がなくなるためです。また、顧客の利益を増やすために自分たちのシステムを売るのであれば、何よりもまず利益が出る部分から使ってもらう必要があります。このように、すべてにおいて「顧客の利益」を最優先に考えることの重要性を感じ取ることができます。
ここで書かれている内容は、まさに自分に必要なスキルだと感じました。TOCを使いこなし顧客の利益を増やすために、テクノロジーの販売ではなくバリューの販売に切り替える。この文化や思想を浸透させること、それこそが最大の競争優位性になると本書では語れていました。これが20年以上前に出版されているのですから、恐ろしいものですね。
クリティカルチェーン
まだまだ行きますよ!次はクリティカルチェーンです。こちらは、不確実性の高いプロジェクトマネジメントを舞台にした物語です。従来の管理では、人の心理的特性やマルチタスク、部分最適な評価システムが原因で、常に納期遅れと予算超過が発生していました。全体の納期を決定づける制約である「クリティカルチェーン」に集中し、バッファを全体最適で管理する手法を導入し、納期を劇的に短縮して企業に財務上の巨大なブレイクスルーをもたらす過程が描かれています。
TOCがプロジェクトマネジメントにも適用できるということを本書を通じて学べます。クリティカルチェーンは、クリティカルパスとは似て非なるものです。クリティカルパスがリソース競合を考慮していないのに対し、クリティカルチェーンはリソース競合も考慮に入れた、プロジェクト全体の最長経路のことです。これこそが、プロジェクトの期間における真の制約です。
また、クリティカルチェーンだけでなく、バッファーマネジメントのやり方や、進捗管理のやり方についても新しい手法を学べます。どれも、TOCの部分最適から全体最適という考え方であったり、ボトルネックを徹底的に活用するといった思想が根底にあります。細かなやり方についてはここでは書ききれないため、新しいプロジェクトマネジメントの手法を探している方はぜひ読んでみてください。
そして実は、この本はただのプロジェクトマネジメントの話だけで終わらず、プロジェクトへの投資についてのパラダイムシフトの側面もありました。従来の投資判断では「正味現在価値」や「ペイバック」といったものを用いることが多いですが、これはプロジェクトが計画通りに終わらなかった場合や、全社におけるボトルネックをそのプロジェクトがどれほど占有するかといった視点が抜けていると指摘されています。
これらを踏まえて、最終的な利益はお金で測るが、投資についてはダラー・デイズという単位を用いるべきということです。投資とは、未来の利益のためにキャッシュを一定期間、拘束することです。したがって、投資の質やリスクは「金額(ダラー)」と「拘束期間(デイズ)」という累積の負荷で計算するべきなのです。
このように考えれば、プロジェクトのリードタイムを短くすることは、単なる現場レベルの改善の話ではなく、経営に大きな影響をもたらします。ボトルネックを活用できなければ、会社のスループットは大幅に低下します。いくら単体のプロジェクトで利益が見込めると言っても、実は全体で見ればそのプロジェクトは止めるべきなのかもしれません。
ザ・チョイス
ついにラストです。もう少しだけお付き合いください。こちらは、ゴールドラット博士と愛娘エフラットの対話を通じて、ビジネスと個人の人生における本質を解き明かす哲学的な一冊です。 人は「現実は複雑」「対立は避けられない」「他人のせいにする」「分かったつもりになる」という4つの思考の障害に陥りがちです。本作ではこれらの思い込みを打破し、「ものごとはそもそもシンプルである」という信念に基づいて、誰もが充実した人生と全体最適の成果(Win-Winの調和)を導き出せる科学的な思考法が描かれています。
読み始めてすぐは、哲学の本か...と思っていたんですが、さすがというかなんというか、哲学でもあり実用的でもある本だなと思いました。「ザ・ゴール」のシリーズを通じて、さまざまな領域でTOCを用いて改善する様子を見てきましたが、その根底にある思想をこれでもか!というくらい投げつけられます。先に書いた4つの思考の障害も、一見するとただのスローガンのようなものに見えますが、TOCの理論を体現するには必ず必要になる思想なのです。
私たちは対立を目にすると、すぐに最適化という言葉に踊らされて最高の妥協点を探しますが、そんなことをしても時間の無駄にしかなりません。すぐに他人の責任を探し、勝利しようとしてしまいます。そうではなく「調和」すること、すなわち、Win-Winの状態を構築することが必要なのです。そのためには、まず先に相手の利益を優先して考える必要があります。この思想と理論を組み合わせることで、初めてTOCの力を最大限に発揮できるのだと感じました。
そして自分もずっと感じていた「確かにTOCは凄いけど、自分にそんな論理的思考能力があるだろうか」という問いにも、この本では答えてくれています。本書の中では「明晰な思考」として語れれています。この「明晰な思考」を実現するために重要なことは「循環ロジックを避けることだけだ」とあります。ロジックが循環していることを検知したら、視野を広げて同じ原因からなる他の結果を追加で探すことが必要です。どんな原因にも2つ以上の結果が必ずあるため、それを落ち着いて探せば良いのです。そして、それらの結果すべてを満たす原因をひたすらに辿っていくのです。
「ザ・チョイス」で語られていた内容を胸に刻み、TOCの理論を実践していきたいなと、背中を推してくれるような一冊でした。
おわりに
ここまで長々と書いてきましたが、私は約1ヶ月半かけて、ザ・ゴールシリーズを一気読みしました。ちなみに、動画は読み終わってから隙間時間で少しずつ見ました。というか、Kindleで読んでたのであんまり気にしてなかったけど、結構鈍器なんですね。よく読んだものだ。
それぞれの本も素晴らしいのですが、もしこれから読むぞ!という人がいたら、ぜひ続けて読んで欲しいなと思います。というのも、ザ・ゴールとザ・ゴール2は明確に物語として繋がっていますが、他のシリーズも、TOCという同じ理論がベースにあります。そのため、同じ理論をさまざまな使い方で学ぶことができるため、知識の定着には効果があったなと思います。基本的には発売順に読めば問題ないかなと思います。
最近の私の悩みは「○○する方が良い」というような話を、売上や利益に繋げることがまだできないことでした。まだ実際の業務で使えていないのでなんともではあるのですが、自分のこれまで感じていたことや考えていたことを、実際に利益(お金)といったものに繋げて考えるための、1つの武器にTOCはなるような気がしています。
長くなってしまいましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。ぜひ興味を持った方は、読んでみてくださいね。感想を語り合いましょう!