親しい間柄でも、礼儀は必要だ。このシンプルな真理を忘れがちになる人は少なくない。何故だろうか?親密さが深まるにつれ、形式や礼儀を疎かにすることが「信頼の証」と勘違いされるからだ。だが、それは大きな誤解である。
人は、心を許した相手に対して自然体でいることが大切だとしばしば言う。確かにその通りだが、その自然体が礼節を欠くことを正当化するわけではない。親しい関係ほど、相手を尊重し、その境界を認識することが重要になる。なぜなら、親密な関係は、お互いの内面を深く理解し合うことから成り立つ。その理解を踏みにじるような振る舞いは、結局のところ、関係の破綻を招く。
親しい関係であっても、礼儀を持って接することは、相手への敬意を示す行為だ。それは、その人を大切に思う心から自然と生まれるべきものである。相手への配慮や尊重が欠けると、やがてその人の内面の浅はかさが露呈し、関係にひびが入る。
例えば、友人や家族間でさえ、相手の時間や空間、感情の尊重は欠かせない。約束を守る、相手の意見に耳を傾ける、感謝の気持ちを表現する―これらはすべて、親密な関係を維持する上での基本である。これらの小さな配慮が積み重なり、信頼という大きな絆を築く。
だからこそ、「親しき仲にも礼儀あり」は、単なる古言ではなく、人間関係を豊かにする普遍の真理なのだ。親しい間柄であればこそ、お互いの価値を認め、尊重し合うこと。これが真の親密さを育む秘訣である。
誰もが内面の愚かさを露呈したくない。大切な人を失いたくない。そのためには、親しさとは裏腹に、礼儀を忘れずにいることが肝心だ。親密な関係ほど、細やかな配慮と尊重が必要とされる。これを念頭に置き、お互いを大切にする心を持ち続ければ、どんなに親しい関係も、より深く、より豊かなものへと成長するだろう。