野良犬天国②

きぬごし
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ネパールは野良犬天国と書いたが、その中には何匹か飼われている?犬もいた。

「?」になっているのは、飼っているといっていいのか微妙な関係性だからだ。

たとえば、珍しくロッジの食堂で暖炉にあたっている犬がいた。そのロッジのオーナーの犬だということなのだが、よく客やオーナーにくっついてエベレスト街道を登っているとのことだった。つまり彼女(メスだった)はそのロッジに泊まっているどの客よりも経験豊富なトレッカーだったのである。大先輩だ。

翌日私達についてくるかもしれないね〜と話していたのだが、残念ながら私達より先に出発したトレッカーと先に行ってしまっていた。

残念……と思っていたら数日後、道端でばったり再会した。他のトレッカーにくっついていたのだが、当のロッジの宿泊客ではなかった。話をきくと、彼らも道端で別のトレッカーについている彼女に遭遇し、バトンタッチで同行者になったとのことだった。大先輩は今度は私達にしばらくついてきた、ひと時の癒やしをくれたが、休憩でお茶を飲んでいる間にどこかに消えていった。無事目的地(あるのか?)に着けていたらいいのだけど。

もう一匹にはまた別のロッジの食堂で出会った。しかし今回はそのオーナーの犬ではなく、ゴラクシェプにいるオーナーの知り合いの犬で、その辺に来ているのを見かけたので暖を取らせているのだという。恥ずかしながらそこら辺にいる他の犬と違いが全然わからなかったのだが、オーナーには「あ、あいつの犬だ」とわかるらしい。すごいな、と思う一方、たまに違う犬を入れたりしてるんじゃないかと思ったりもする。犬好きのオーナーさんのようだったので、それでも特に問題はないのかもしれない。

彼女は翌朝私達にくっついてロッジを出発したが、途中で私達とは別の方向に行ってしまった。アイランドピークというよりハードな行程の方に行ったので、彼女(こちらもメスだった)は刺激を求めるタイプだったのかもしれない。そういえば彼女には名前もついていたが、日本人の自分には発音が難しく、聞き取れなかった。

このロッジにはもう一匹、真っ黒な子犬がいた。首輪と鈴はついていたものの名前はわからず、誰が飼っているのかはわからなかったが、よく食堂に現れては宿泊客の癒やしの存在になっていた。親らしき犬も近くにいた。

こんな感じで、たまたまよく見る犬に愛着が湧いて家にあげるようになった人がいて、そんならごはんも貰えるし通る時は立ち寄ろうかいと決めた犬がいる、という関係性の犬と人がエベレスト街道にはちらほらいるようだった。

野良猫のような犬……なのだろうか。日本でも野良犬がたくさんいた頃はこんな感じだったのだろうか。

@wry156
食べ物、お酒、山、夢の日記